「新国立競技場、何が問題か」槇文彦、大野秀敏編著
■8万人もの観客を収容する巨大施設は必要なのか
2020年に開催される東京オリンピック。そのメーン会場として神宮外苑に新国立競技場が建て替えられることとなっているが、法外な工事見積もり費用が提示されるなど、さまざまな問題が取り沙汰されてきた。
槇文彦・大野秀敏編著「新国立競技場、何が問題か」(平凡社 1400円)では、2013年10月に行われたシンポジウムをもとに、東京体育館などを手掛けた槇文彦氏を中心とする建築家らが、新施設建て替えの問題点を明らかにしている。
日本スポーツ振興センター主催の国際デザインコンペを経て、イラク出身の建築家であるザハ・ハディド氏の案が選ばれた新国立競技場。しかし、このコンペ自体に大きな問題があったと本書。まず、総床面積が29万平方メートルと、国立代々木競技場の8倍という巨大さだが、これは建築家の考えではなく、コンペの募集要項で最初から8万人の観客を収容する全天候式の施設が要求されていたという。コンサートなど文化的行為の活用を視野に入れたものといわれているが、8万人もの観客を動員し得るイベントがそれほどあるものなのか。そして、この巨大施設を維持していくためのエネルギーや人件費について、都民に対する説明責任が果たされていないことも問題だ。