「熱狂なきファシズム」想田和弘著

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 ファシズムが「ハイル、ヒトラー!」を叫ぶ群衆場面のような熱狂を伴っていたのは昔の話。現代ニッポンでは「熱」を感じさせないトホホな全体主義が社会を覆い尽くしている。

 その象徴が安倍首相。その政治手法は「あっさり」と「突然」が特徴。たとえば改憲問題では一時期意欲を見せた「96条」の先行改定策の旗色が悪いと見るや、「あっさり」解釈改憲に路線転換した。また特定秘密保護法問題では、昨年秋の臨時国会での所信表明演説では一切触れなかったのに、「突然」法案を国会に提出し、強行採決に踏み切った。そこに熱狂や興奮がないのは、実は国民に正面から問題の核心を問うことを避けているからだ。

 その正反対が橋下大阪市長。挑発と攻撃で激しい賛否を巻き起こしながら熱狂的ブームを呼んだものの、結局は「ストレートで、或る意味バカ正直な彼の手法」は世間から見放され、橋下ブームは去ってしまった。新進気鋭のドキュメンタリー映画監督である著者は、こうした状況を観察し、「ずるずるじわじわコソコソと進むファシズム」が現代の特徴なのだと喝破している。

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