講談社「吉川英治文庫賞」新設
■小説の主戦場は「文庫本」に
近年ますます、単行本よりも文庫本の方が圧倒的に売れる傾向が強まっているそうだ。某出版社では「他社の単行本でぜひ文庫本にしたい作品があれば、文庫編集部までご一報を!」と、書籍編集部のみならず営業部や経理部に至るまで全社的に募っているという。
実業之日本社は、同社の文芸誌「月間ジェイ・ノベル」で連載していた東野圭吾作「白銀ジャック」(2010年)を単行本化せずにいきなり文庫本で出版し、発売から1カ月余りで累計100万部を記録して話題を呼んだ。単行本出版から3年ほどで文庫化する、という従来の常識を覆すこの手法は「いきなり文庫」と呼ばれ、同社の成功をもとに出版業界全体の流行となった。
講談社では、宮部みゆき作「おまえさん」(2011年)を、単行本と文庫本を同時に発売。ブームの火付け役となった実業之日本社は、その後、文庫本書き下ろし作品として東野圭吾作「疾風ロンド」(2013年)を出版した。業績不振が続く出版業界のなかで、文庫本は頼みの綱となっているのだ。