宮城安総
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宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

ゾンビ映画の歴史を一望する天下御免の意欲作

公開日: 更新日:

「ゾンビ映画年代記」オジー・イングアンソ著 (パイインターナショナル 3200円+税)

「250点を超える図版とともにゾンビ映画の歴史を徹底解剖!(帯より)」

 いろいろな意味で「堪らない」ビジュアル本。漆黒のカバーは、濃い灰色のゾンビの顔で埋め尽くされている。タイトルの赤い文字はUVニスによる「艶加工」が施され、血のりさながらの「ヌメッ」とした質感が印象的だ。

 日本の「お化け屋敷」に通じるオドロオドロしい「様式美」は、恐怖を通り越してむしろほほ笑ましい。B5判、並製。映画公開当時のポスター、チラシ、ロビーカード(映画館用の宣伝写真)、スチール写真、舞台裏風景など、収録の図版は時代を超え、どれも鮮明で高画質だ。

 序文はジョン・ランディス(M・ジャクソンの「スリラー」の監督)のご子息、マックス・ランディス。ざっくばらんな書きっぷりのおかげで、ゾンビに親近感を覚えるとともに、悲痛な話ばかりが続く本書中、数少ない「救い」になっている。

 さて、本書の基礎知識として「ゾンビ史」をさらっておくと、その起源は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(監督=ジョージ・A・ロメロ/1968年)とするのが順当だろう。第4章を丸ごと「ロメロの革命」としていることからも事の重大さが窺える。ロメロ以前のゾンビは、カリブ海を舞台にブードゥー教の呪術師に操られ肉体労働に勤しむ、かわいそうな死体たちだ。しかし本作以降、宗教色が消え舞台を現代の都市郊外に設定、普通の生活者の死体がゾンビとなる。しかも同情の余地なしの「即物的ゾンビ」が誕生する。

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