「愚か者」松田公太著

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 勤めていた銀行を辞めて、スペシャルティーコーヒーの文化を日本に定着させるべくタリーズコーヒージャパンを創業した著者。若き経営者として一躍有名になった後、ひょんなことから政治の世界に足を踏み入れた。本書は、銀行員から経営者へ、そして政治家へと次々と挑戦し続ける著者が、経営者時代に経験した辛苦から政治家となってからの日々までを赤裸々に描いた話題作だ。

 一番の読みどころは、国会議員となってからの経緯だろう。国会議員歳費削減法案の顛末、インターネット選挙解禁に対する長老議員の抵抗、「みんなの党」の渡辺氏と江田氏の対立と解党、「日本を元気にする会」の旗揚げ、原発再稼働質問を許さないヤジ攻撃、招かれなかった日曜討論、安保法案に歯止めをかける修正案を提出した意味など、報道だけでは知ることができなかった内部事情が明かされていく。

 銀行員のままでいれば、経営者のままでいれば、既成の党に所属していれば安定した道を歩めることがわかっていながら、困難な道に飛び込んでいく自分を愚か者と称する著者の人生を通して、今の日本の問題点も見えてくる。(講談社 1400円+税)

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