「コーヒーにドーナツ盤、黒いニットのタイ。」片岡義男著

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 大学卒業後、3カ月の会社員生活を経てフリーランスのライター生活に入り、1974年に作家としてデビューした著者。本書は、作家デビューするまでライターとして過ごした日々を、その時々に流れていた音楽と共に仕立てた自伝的小説だ。

 60年に喫茶店で知り合った大学生との映画談議に登場した「リオ・ブラボー」の映画とディーン・マーチンの歌、会社をすぐ辞めることにした63年に聴いた「チュニジアの夜」、ビートルズ来日記者会見の席に出られずに神保町で原稿を書いた66年、アーサー・フィードラーのボストン・ポップス・オーケストラによる「ペルシャの市場にて」の旋律が流れる文具売り場で、楽しく美しい本をまだ一冊も作っていないと気づいて愕然とした68年……。

 原稿用紙と鉛筆を手に、音楽と共に過ごした日々が語られていく。その語り口は軽くフィクションのようでもあり、CDもインターネット配信もなかったドーナツ盤の時代の空気が全編に満ちている。(光文社 2000円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

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