「国家戦略特区の正体」郭洋春氏

公開日: 更新日:

“特区”で得するのは外国資本。知識創造型の産業こそが、日本が生き残る道です

 安倍政権が成長戦略の柱にする国家戦略特区は、東京圏、関西圏、愛知県、福岡・北九州市など10の指定地域を、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」にするというものだ。

「そもそも特区というのは、資金も技術もない発展途上国がスペシャルな地域をつくり外資を呼び込む手段で、目標は経済成長です。それをなぜ先進国の日本でやるのか。安倍さんの目的は規制緩和です。特区なら許されるということで、『岩盤規制』がある分野をトップダウンで進めています。しかも地方ではなく都市部でやる『異形の特区』なんです」

 日本の医療は、市場原理だけにまかせず、国が積極的に責任をもつ国民皆保険制度をもっている。だが規制をなくしたら、アメリカのように金持ちは高度医療を受けられるが、貧乏人は病院に行けない状況になる。それをまず特区で行うのだ。

雇用教育、農業もターゲットです。労働基準法を変えるのは憲法違反になりかねないし、産業全体に及ぼす影響も大きくなりますが、特区に限定すれば規制緩和ができます。でも、それで得をするのは誰でしょうか。外国資本です。自由競争で市場原理主義を導入すれば、政府の役割が軽減され民間活力を生み、競争を強めれば強めるほど生活が良くなると新自由主義者は言ってきました。でも競争は、負ける人や組織、企業がいないと成り立ちません。不平等を生み出す仕組みでしかないんです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗