「ストレスチェック時代のメンタルヘルス―労働精神科外来の診察室から」天笠崇著
2015年12月から、多くの企業に「ストレスチェック制度」が義務付けられた。急増しているうつ病などの精神疾患の発生を未然に防ぐことを目的として、職場での労働者の心理的負担を検査する制度だ。
しかし、代々木病院精神科科長の著者は、「現状のままでは形だけで終わってしまう」と指摘。せっかくのストレス制度を生かすためには、8つの不足を補う必要があるという。①ストレス調査項目の不足②「高ストレス者」と「集団分析」のリンク③実施者として想定される産業医の不足、質の不足④専門医の不足⑤面接指導の申し出の不足⑥職場環境改善の視点の不足⑦対策・措置のチェックの不足⑧エビデンスの不足――だ。
中でも①は、国が推奨している現在の調査票では、長時間過重労働が深く蔓延し、努力が報われない仕事とハラスメントが新たなストレス因子として重要になっている現状に対応しきれないという。そのため、長時間労働、努力報酬不均衡、ハラスメントに対応する調査項目を加えること、それに応じた分析ができるような選定基準を設定する必要があると提言する。
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