「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」栗原類著

公開日: 更新日:

 栗原類は17歳のとき「ネガティブキャラ」でブレークし、モデル、タレント、役者として「輝ける場所」を見つけた。だがそれは、並大抵の道のりではなかった。

 イギリス人の父と日本人の母との間に生まれた類は、ニューヨークの小学校に通っていた8歳のとき、発達障害と診断された。感覚が過敏でこだわりが強い。衝動を抑え切れない。コミュニケーションが苦手。何でもすぐに忘れてしまう。勉強に興味がない。母はそんな類に、「何でこんなこともできないの?」とは言わず、息子のよい部分を見つけ、できることを褒めた。ゲームをやりたいだけやらせ、アニメを見たいだけ見せ、石や動物に興味を示せば博物館や動物園に連れていった。

 発達障害への理解が日本よりはるかに進んでいるアメリカの環境も幸いした。小学校の担任は、笑わない類にコメディーを見ることを勧め、そのことが「いつか素晴らしいコメディー俳優になる」という夢につながった。

 映画「ファインディング・ニモ」を見たとき、類は何でも忘れてしまう魚「ドリー」が面白くて笑った。母は類とドリーの共通点を話して聞かせ、気づきを与えた。

 11歳のとき日本に帰国。中学時代にモデルの仕事をするようになったが、どう頑張っても忘れ物をしたり、遅刻したり。それでも母や主治医、マネジャーなど、周囲の理解とサポートを得て、類は活動の場を広げていく。同世代の友達とも付き合えるようになった。将来一人暮らしができるように、母はあえて数日家を空け、自立の訓練も始めた。

 栗原類と母の半生記は、貴重なケーススタディーとして、発達障害を抱える人とその家族に光を投げかけている。(KADOKAWA 1200円+税)

【連載】人間が面白い

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

  2. 2
    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

  3. 3
    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

  4. 4
    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

  5. 5
    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

  3. 8
    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

  4. 9
    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

  5. 10
    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず

    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず