中川右介氏寄稿 「妻ある男の恋」再び容認されるためには

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 洋の東西を問わず、不倫(不義密通)は小説や演劇の重要な題材だ。

 女に人権がない時代、女は男の所有物だったので夫のある女が男と関係を持つ不義密通は「窃盗」の一種である姦通罪となった。そのため夫を裏切った女も盗った男も、徳川時代は死罪、明治になってからも禁錮刑だった。戦後、男女平等の精神に反するとして姦通罪が廃止されると、女は「夫以外の男と関係を持つ自由」を得た。この「自由」とは、あくまで刑法上の罪ではないという意味だ。

 女性の不倫への罪の意識は薄れ、「夫にバレなければいい」となり、それならば「私にもできるかもしれない」「やってみたい」となり、1950年に大岡昇平が「武蔵野夫人」を、57年には三島由紀夫が「美徳のよろめき」を発表すると、ともにベストセラーになり映画にもなった。とくに後者はテレビドラマ化もされ、「よろめき」は不倫を意味する流行語となった。

 一方、以前の日本は「妻のある男が他の女と関係をもつこと」にはおおらかで、昔は妾を持つ人は多かった。しかし、いまや「愛人発覚」は、政治家や芸能人にとって致命的なスキャンダルだ。「妻ある男の恋」は、その相手の女ともども糾弾される傾向にある。

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