【特別寄稿】川上哲治元監督を悼む(中村稔・元巨人投手コーチ)

公開日: 更新日:

「なんで俺ばっかりいつまでもノックをやらされるんだよ」
 昭和32年の春のキャンプ。私は宇治山田商から巨人に入団した新人だった。全体練習が終わってもひとり残され、武宮(敏明)二軍コーチからコッテリ絞られた。

 実は私は巨人の伝説のエース沢村(栄治)さんの親戚。後に知ったことだが、それを知った川上さんが何とか私を一人前にしてやろうと武宮コーチに頼んだのだった。

 昭和39年の春先、車を運転していた私は交通事故を起こした。そのためそのシーズンは1勝もできずに終わるのだが、事故の報を聞いて川上さん(当時監督)が自宅まで訪ねてきた。わざわざお見舞いにまで来ていただいて申し訳ないと思ったが違った。畳一枚ほどの紙を広げると壁に貼り付けた。

「稔! 毎日コレを読め!」

 今では内容は忘れてしまったが、人の生き方、社会人としてのあるべき姿が箇条書きで12項目、黒々とした墨で書かれてあった。野球で成功するには、まずひとりの人間としてきちんとしろということだった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”