「リニア新幹線 巨大プロジェクトの『真実』」橋山禮治郎著
■建設費9兆円のリニア新幹線は本当に必要か
「リニア新幹線」の着工に向けた作業が着々と進んでいる。時速最高505キロ。東京-大阪間を67分で結ぶ“夢の新幹線”だ。
しかし一方で、これほどの巨大インフラが本当に必要なのかを疑問視する声も上がっている。橋山禮治郎著「リニア新幹線 巨大プロジェクトの『真実』」(集英社 720円)では、着工直前の今、改めてその問題点を洗い出している。
そもそもなぜリニアが計画されたのか。JR東海が主張しているのが、「東海道新幹線の輸送力が限界に近づいていることによる増強」だ。ところが、その輸送実績を調べてみると、1990年代からは横ばいが続き、2009年度以降は50%台に低迷。盆・暮れ・正月は別として、通常時は40%あまりの空席があることになり、輸送力の限界という主張には矛盾がある。
また、JR東海は「移動時間短縮のための大幅な高速化」の必要性も説いているが、朝日新聞のアンケートによるとリニアを「不要」「どちらかといえば不要」と答えた人が54%に上った。