見通しの正しさが年末には証明されているはず

公開日: 更新日:

「知らないと恥をかく世界の大問題6」池上彰著/角川新書

 池上彰氏の「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズは、これで6冊目になる。これだけ長く続いても、内容がマンネリ化しないのは、池上氏が時代の半歩先を読む類いまれな洞察力を持っているからだ。ちなみに既に起きてしまった出来事を後知恵で巧みに説明する人はたくさんいる。また、5年先のトレンドを大ざっぱに見通すことができるシンクタンクのアナリストも珍しくない。

 しかし、半年から1年後に生じうる、評者の言葉で言うところの半歩先を見通すことができる人は、意外と少ないのである。情報通はさまざまな人間的しがらみを持つ。このしがらみに引きずられて、分析を誤るのだ。

 池上氏の場合、権力者に近づきすぎない。それ故に、半歩先を、冷徹な目で分析することができるのである。辺野古(沖縄県名護市)への米軍新基地建設問題について、池上氏はこう記す。

〈2014年11月、アメリカ軍の普天間基地の辺野古移設の是非を争点とした沖縄県知事選で、移設反対派の翁長雄志候補が初当選しました。/翁長知事が就任のあいさつで永田町を回った際には、安倍首相をはじめ、政権幹部は誰も会おうとしませんでした。県民の代表を無視したのです。/政府は予定どおり移設計画を進める方針ですが、翁長知事は辺野古の海に新しい基地はつくらせないと言っています。工事を強行突破すれば、沖縄県民の怒りは高まるでしょう。/(中略)沖縄の人々は、沖縄ばかりに負担を押し付ける日本に見切りをつけ「琉球独立」を唱える声も出てきているようです。/沖縄県民の犠牲の上に成り立ってきた戦後日本の在り方が、あらためて問われているといえます。〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”