アメリカ社会の底流 トランプ政権で表に出てきた“腐った部分”

公開日: 更新日:

「ダーク・マネー」ジェイン・メイヤー著、伏見威蕃訳

 オバマ政権が誕生したとき、これから訪れるリベラルの時代を恐怖した一団がいた。それが保守勢力。保守といいながらもこの一団には国士の志はなく、アメリカを自分たちの利権の場にすることしか頭にない。その中心にいるのがコロラドを本拠地とするコーク兄弟だ。本書は「ニューヨーカー」誌の記者が、この経済利権集団を追った力作ノンフィクション。

 コーク一族の長フレッドは石油事業を始め、その技術でヨーロッパに食い込む。反共主義者だったが、利権を求めて建国間もないソ連との取引に走り、ついで関わったのがヒトラーの第三帝国だった。こんな黒歴史を持つコーク一族とその周辺が、どのようにしてオバマ政権のリベラル政治を阻害し、共和党首脳部を抱き込んで保守政治そのものを堕落させたかが入念に描かれる。

 現代のアメリカ政治では大衆扇動のポピュリズムが問題になっているが、実は草の根の保守団体と呼ばれる組織にはコーク兄弟の裏資金が大量に流れ込んでいる。その実態も本書は明らかにしている。(東洋経済新報社 3600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”