フジ鹿内社長を怒らせた 前田武彦「共産党バンザイ事件」
ー1973年6月ー
2011年8月5日、ひょうひょうとした調子の名司会で人気だった前田武彦が82歳で亡くなった。訃報記事で取り上げられた「バンザイ事件」。マエタケの一生を決定づけた騒動は今太閤の田中内閣が支持を落とし、革新勢力が躍進する政治状況の中で起きた。
73年6月17日。青森と大阪で行われた参院補選は激戦となった。とりわけ2年前に黒田革新府政が誕生し、前年の総選挙で共産党が衆院の全6選挙区で議席を確保した大阪は、160人の国会議員を前日に送り込む熱の入れよう。インフレ退治に失敗し、国民にソッポを向かれ始めた角栄にとって、議席の死守は最重要課題だった。
その翌日、生放送の番組終了間際に“事件”は起こった。
23時ちょっと前。フジテレビの人気歌番組「夜のヒットスタジオ」のエンディングテーマが流れだした時だった。司会の前田武彦が突然、両手を高く上げ「バンザーイ、バンザーイ」と繰り返した。出演者やスタッフ、視聴者は何のことかわからず、キョトン。これが後に大問題となり、3カ月後、前田は番組から降ろされてしまう。