タモリの一言でブーム終焉となった「一杯のかけそば」
ー1988年12月ー
昭和最後の年越しとなった1988年末、ラジオが一本の「実話童話」を放送した。この話が「涙なしでは聞けない」と評判を呼び、ついには社会現象になった。作者もマスコミの寵児(ちょうじ)となるが、過去を知る人に告発され、一転して疑惑の人に。
大晦日にFM東京は、「ゆく年くる年」の中で「一杯のかけそば」と題した童話を朗読で放送した。作者は民話の語り部活動を行っている栗良平(当時45)なる人物。
この作品は70年代初頭、2人の子供を連れた貧しい身なりの女性が、札幌のそば屋を訪ねるところから始まる。女性が頼んだのは150円の一杯のかけそば。店主は何も言わずに半玉をサービスし、親子3人はそのそばをおいしそうに分けて食べた。こんな交流が毎年、大晦日に数年間続く。ところが、ある年から3人はパタリと現れなくなった。店主はその後も、大晦日は彼らの席を予約席にして待ち続けたが……。そして、最初の大晦日から14年後。成人して医師と銀行員となった息子と母親が現れて、「あの時の一杯のかけそばのおかげで生き抜くことができました」とお礼を言う。しみじみとした人情話である。