“一番美しい役”をやらねば…玉三郎が抱く現実への危機感

公開日: 更新日:

 今月は2作の新作歌舞伎が上演されている。歌舞伎座ではグリム童話を原作とした「白雪姫」、新橋演舞場では宮崎駿のコミックを原作とした「風の谷のナウシカ」。ともに、主人公は16歳の少女。69歳の坂東玉三郎が白雪姫、42歳の尾上菊之助がナウシカを演じている。女優では無理で、女形にしかできない「芸」だ。

「白雪姫」は日本では継母に殺される話として知られているが、原作では実母で、歌舞伎版はそれに基づく。玉三郎が脚本と演出にも関わり、シンプルだが考え抜かれた衣装とセットが美しい。

「小人」は「妖精」という設定に変え、透明感のある子役たちが大健闘。童話を大人の観客を対象とした演劇として上演するのであれば、社会風刺であるとか、大胆な新解釈をしたいという劇作家・演出家の芸術的欲求があるはずだが、ここにはそれはない。

 若さをなくし容姿が衰えつつある女が実の娘に嫉妬する話は、老いつつある美人女優と若い女優にそのまま置き換えられ、さらに歌舞伎の女形に移された――玉三郎が野分の前で、児太郎が白雪姫なら、そういう話になる。だが、違うのだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗