井筒和幸
著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

“飛ばし見”して粗筋が分かった気でいても何も感極まることもない

公開日: 更新日:

 先週、子供らが学校の授業でパソコンばかりじゃ学力がつくどころか何も脳ミソの中に残らないし、Z世代はスマホなしじゃ精神不安、「スマホ脳」で他人の「いいね」ばっかり気にしてたら、もうアウトだぞと書いた直後、また、アウトな話が聞こえてきた。

 AmazonプライムやNetflixの配信ドラマや映画を1・5倍速で見るのは常識で、画面の10秒送りも当たり前、会話が止まる無言芝居や静かな風景場面の「飛ばし見」も増えているというのだ。作り手には嘆かわしい話だ。雑誌記事にもあったが、女性ユーザー会員らではやった韓国の「愛の不時着」も、主人公らの恋愛がらみの場面以外は早送りで見て、あんたは業界人かと問いたくなる“視聴の達人”が多くいたとか。

 ドラマの中身が劣化しているからだとは片付けられない。確かに、猿の惑星のお猿さんなら分かるようなおとぎ話がいっぱいある。見るのがかったるくて時間の惜しい人間は飛ばし見で当然だ。

 映画まで「コンテンツ」などと呼び(もともとIT業者が言い出しやがった単語だが)、安い定額サービスであまたのコンテンツを月に何十本と飛ばし見し、仲間らの共感に追いつきたい金欠の若者たちがその利用者だ。彼らは「映画体験」とは言わない。だから感想は細かく語れない。「ヤバかった」か「意味不明」だ。映画は小腹を満たすカップ麺か、仲間との話の道具(ツール)に思っている。ビデオかDVDをやっと手に入れ、当然だが一作ずつ、当然だが2時間かけて、人との約束も忘れて一心不乱に見たことを彼らは知らない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”