「虎に翼」ウラの見所~朝ドラ史上、いやテレビ史上に残る名判決シーン。「政治の貧困」の言葉が胸に突き刺さる

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コクハク

第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」#115

【朝ドラのツボ!】

 昭和38年6月、桂場(松山ケンイチ)は最高裁判事のひとりに任命される。

 竹もとで修業に励む梅子(平岩紙)、そして道男(和田庵)にも人生の転機が訪れる。寅子(伊藤沙莉)もまた、更年期の不調を抱えながら、認知症の百合(余貴美子)に向き合っていた。

 そして12月、ついに「原爆裁判」の判決が言い渡される日がやってきて――。

【他の画像も見る】余貴美子演じる百合さんが凄い

【本日のツボ】

竹もとと笹寿司、まさか!? のコラボ
 ※※以下、ネタバレあります※※

 ついに、梅子のあんこが桂場に認められる日がきました。私の記憶が正しければ、寅子が新潟から東京へ戻ってきた頃にはもう桂場の“お団子試験”は行われていたので、かれこれ8年以上はこのやりとりを繰り返していたことになります。

 梅子に店を譲りたい竹もとのご夫妻もよく耐えたものです。

 梅子が合格したその日、竹もとに寅子と待ち合わせていた道男がやってきます。笹山のおっちゃん(田中要次)が実はもうほとんど歩けないこと、そして、自分に店を継がないかと打診されたが断ったことを寅子に告げます。

「俺、バカだろ? 金勘定とか、店の客とのお喋りも下手だ。だから、料理は好きだけど、客商売には向かないと思うんだ」「せっかく俺の居場所を作ってくれたのに、ごめん」、寅子に土下座する道男。

「ばあちゃんにも、花江ちゃんにも合わせる顔がねえよ」。その言葉に反応した梅子が道男に「なら、一緒にやる?」と声を掛けました。

「和菓子とお寿司のお店をここで。ひとりで店をやるのは心細いと思っていたの。私だけじゃ、継いだところでそう長くはお店を続けられないし…」

「梅子さんのやりたいようにやったらいいわ」「ああ。梅子さんと彼で決めなさい」竹もとのご夫婦、なんという人徳の高い人たちでしょう。

「どうかしら? さっき、あなたが苦手と言ったもの、私、全部、得意。あと…私、頭はすこぶるいいわよ、うふふ」

 寅子のほうを見て茶目っ気たっぷりに微笑む梅子。これで契約成立。竹もとと笹寿司のまさか!? のコラボが決まりました。

 今でこそ、回転寿司にもいろいろなデザートがありますが、この時代、寿司と甘味の店は画期的です。どんなお店になるのか、楽しみです。

息をのむ原爆裁判の判決シーン

 そして、実に8年にも渡った原爆裁判の判決がついに出ました。「判決主文を後にまわし、先に判決理由の要旨を読み上げます」裁判長の汐見(平埜生成)。「この当時、民事裁判で主文を後回しにして理由を読み上げるのは異例の出来事でした」とナレーションが入ります。

「原子爆弾はその破壊力から無差別爆撃であることは明白である。当時の国際法から見て違法な戦闘行為である…」、判決理由が粛々と読み上げられていきます。

 途中、判決が見えたとばかり傍聴席の記者たちが一斉に立ち上がり、法廷を出ようとします。

「人類始まって以来の」。そんな記者たちを一瞥し、彼らを退出させるものかという気迫をもってさらに読み続ける汐見。その声にただならぬものを感じた記者たちはもう一度戻って席につきました。

「国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人を死に導き、障害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである…我々は本訴訟を見るにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである」

「政治の貧困」…60年以上も前のことながら、今に生きる私たちに刺さりまくりの判決理由で、一字一句書き写したいほどですが、そうもいきません。

 そして、この判決理由が読み上げられている間の、原告側弁護人、被告側弁護人、傍聴席の記者たち、寅子、外で聞いている航一(岡田将生)。それぞれの変化する表情に釘付けになりました。

 朝ドラ史上、いやテレビ史上に残る名判決シーンでした。これはひとりでも多くの人に見てもらいたいです。

(桧山珠美/TVコラムニスト)

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