2度も妻子持ちと…不倫相手の妻から刺された弘田三枝子
ー1977年1月ー
1977年1月25日午前6時を少し回ったばかり。まだ薄暗い中、うつろな目をしたひとりの女性が港区の麻布警察署の正門前に現れ、当直の警官に「今、人を刺してきました」と言ったきり、その場に倒れこんだ。
女性はジャズギタリストS(当時34)の妻A子(同29)。刺した相手は人気歌手の弘田三枝子(同29)だった。
A子が果物ナイフを持って弘田の住むマンションに行ったのは午前4時20分。その時の気温は0度。寒さに震えながら物陰で40分以上も待ち続け、5時過ぎ、Sと一緒にタクシーから降りてきた弘田の背中を果物ナイフで3回、立て続けに刺した。傷の深さは1~1.5センチほど。刃先がもう少し深く入っていれば、腎臓に達する恐れもあったが、幸い急所は外れ、数日の入院で済んだ。
弘田とSが仕事を通じて知り合ったのは75年1月。次第に男女の仲になっていき、その年の夏頃からSはしばしば家を空けるようになった。同年のクリスマスも自宅に戻らず弘田の家に泊まっていた。