映画評論家・前田有一氏が厳選 正月に絶対観たい映画3作品
平成も終わるというのに、年の瀬に株価は大暴落。入管法成立やら水道民営化、来年には消費税増税と明るい希望はなし。そんなカネなし、ヒマなし庶民の味方が映画だ。スクリーンの中には迫真の人間ドラマも、美女のヌードも、手に汗握るスリルも満ちあふれている。海外旅行などぜいたく品という寝正月派もせめて映画でいい夢見ようじゃないか。
■子供よりお父さんが夢中のアニメ「シュガー・ラッシュ:オンライン」
ファミリー映画の鉄板とくればディズニーアニメだが「シュガー・ラッシュ:オンライン」(公開中)は、中年男性向けネタが多数でおすすめ。スーパーマリオやディグダグ、パックマンといった懐かしいアーケードゲームキャラたちの日常と舞台裏を描くパロディーアニメの続編だ。今回はキャラたちが廃棄処分になりそうな自分のゲーム筐体の危機を救うため、ついにインターネットの世界に飛び込む。楽天やアマゾン、ツイッター等々を巨大な街並みに具現化したネット世界の描写が圧倒的に面白い。全部実名なもんだから、思わずなじみのサイトを探してしまう。いまどきはネットもゲームも、一番夢中なのは子供よりお父さん、だ。
アナログ派には「暁に祈れ」(公開中)、タイの刑務所に収監された英国人ボクサーの壮絶な半生の実写化だ。リアルさを追求するべく撮影は現地の刑務所内にセットを建て、エキストラも全部囚人。ボクサー役も本物のムエタイチャンピオンを起用した。おまけに手記を書いた本人も父親役で出演。画面の隅々までアナログな迫力に満ちた、究極の刑務所実録ものといえる。