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黒塀の老舗酒場で徳利転がす夕べかな

■赤津加 秋葉原

 エプロンにカチューシャの若い女性が「メイド喫茶、いかがですか?」とサラリーマンの袖を引き、外国人観光客がたむろする中央通りの往来を抜け、街の奥へと歩を向けると、黒塀に囲まれた日本家屋が現れる。1954(昭和29)年創業の「赤津加」。駅前に青果市場のあった頃は仲買人で賑わった、秋葉原の老舗居酒屋である。

 紺地の暖簾をくぐり、曇りガラスの引き戸を開ければ、柔らかい蛍光灯のなか、創業当時から変わらぬ空間が広がっている。玉砂利の敷かれた床、どっしりと構えるコの字カウンター、古色蒼然(そうぜん)とした、菊正宗の看板には風格が漂うが、重苦しいわけじゃない。止まり木に腰を落ち着けて、一杯ひっかければ、街の喧騒が遠のき、心を解きほぐしてくれるに違いない。

 酒は、店の顔でもある菊正宗500円。燗(かん)をつけてもらう。一合升から漏斗を通り、五合徳利から小徳利へと注がれ、酒燗器へ。程よいところで、カウンターの上に置かれる徳利。お猪口を手にすると、女性スタッフが「どうぞ」と優しい笑顔を浮かべ、お酌してくれた。それを一滴もこぼさないよう、そおっと口を近づけて、すする心持ちったらない。温められて花開いた芳醇(ほうじゅん)な香り、まろやかな舌触り、温かい酔いが五臓六腑(ろっぷ)に染み渡る。

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