都医師会長 尾﨑治夫氏 コロナ対策で省庁横断の独立機関を
「コロナウイルスに夏休みはない」――。こう言って政府の後手後手対策を痛烈に批判したのがこの人だった。都医師会トップとして、現場の医師として、問題提起を続けている。寒くなる秋冬にかけて、感染者が増えるのではと危惧されている。コロナ禍は今後どうなるのか。菅政権にかじ取りが可能なのか、話を聞いた。
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――コロナウイルスは気温が低くなる秋冬に活性化するという指摘があり、インフルエンザとの同時流行が心配されています。
9月の時点でインフルエンザの患者が全国で数千例出てくるのが通常ですが、今年はほとんど出ていません。コロナにかかってある程度免疫が高まってきたことが、インフルエンザに感染しづらい状況をつくっていると指摘する専門家もいる。一方、同時に感染すると重症化するという見方もあります。非常に混沌としていますが、医師会としては悪い方向にいった場合にしっかり対処できるだけの検査体制をつくっておきたいと思います。
――インフルエンザかコロナのどちらか判断がつかない患者が病院に殺到すると、医療現場の負担は深刻になりそうです。
保健所から紹介される検査とは別に、医師会でPCRセンターをつくってきました。ある程度の体制を整えることができましたが、インフルエンザかコロナか分からない患者が100~200人も押しかけることになれば、現場が厳しい状況になるのは明白。そこで、町のクリニックのかかりつけ医にも検査を担ってもらう体制をつくるべきと、7月から会見などで申し上げてきました。
――現状の体制はどうなっていますか。
都の人口は約1400万人。1万人当たりに1カ所あれば対応できるだろうと考え、都内1400カ所を目標にしてきました。現在は、約1800カ所で検査が可能になっています。これらのクリニックでは、医師がコロナを疑えば、検査は保険適用され、患者負担はありません。
■検査対象は地域を絞るべき
――検査できる場所は目標に達した。他に必要なのは?
検査手法もポイントです。患者の鼻に、綿棒を奥まで差し入れるPCR検査だと、咳やくしゃみをする患者が多い。医師の感染リスクが高いので、防護服をフル装備しなければなりません。一般のクリニックでは、普段の診療をしながらそこまでの対応は大変です。そこで注目されているのが、鼻の入り口付近を綿棒でこすって検体を取る方法。これなら、患者自身が検体採取できる。離れた場所で取った検体を医師が受け取るだけですから、感染リスクはほとんどありません。ただ、この検査に対応するキットがまだ揃っていません。広く実用化するには、1~2カ月かかるとみられています。
――便利な検査がもっと広がるといいですね。
課題もあります。結果が10分程度で分かる抗原検査になるのですが、仮にコロナの陽性患者が出た場合、その時点から保健所の指針に従って患者を行動させなければいけない。大病院であれば、そのまま入院してもらうことが可能ですが、一般のクリニックの場合、そこからどう移動してもらうのか、どう待機してもらうのか、非常に判断が難しいのです。
――一口に「検査」といっても、それぞれの現場で事情が違いますね。世間でも、検査体制については考え方に差があります。東京・世田谷区の「いつでも誰でも」検査可能な体制をよしとする声や、検査拡充は「税金の無駄」という声も上がっています。
例えば、世田谷区で感染が急拡大しているのであれば、一斉検査の意味は大きいと思います。陽性患者がどの地域に多いのか、無症状者がどれだけいるのか分かれば、対策を練る上で参考になります。しかし、今は都内で陽性率が低くなってきている。そこまでの体制が必要とは思えません。
――感染が急拡大している地域にポイントを絞るべきと。
以前、東京・新宿の歌舞伎町で、一部のホストクラブなどで感染が拡大しました。歌舞伎町には数百軒のホストクラブがあるといわれています。大きい店舗なら従業員は数十人。すると、歌舞伎町という地域に限っても検査が必要な人は万単位になる。一般的に、感染力は発症してから10日間程度とされます。10日間、休んでもらったとしたら、1日当たり1000人単位で検査しなければなりません。相当な人数を集中させなければなりません。