仏様のお供えは「花」とは限らない! もうすぐお彼岸、仏花にまつわるケンミンSHOW的な話
仏花の調達が難しい!
ねこ店長「さぶ」率いる我がお花屋は、神奈川の仏事に手厚い土地柄の片田舎にあります。とりわけ、夏のお盆からお彼岸月の9月にかけて、仏花の調達に頭を悩ませておりますが、近年の異常気象と円高!
【笑う花には福来たる】
仏花の要である「菊」をはじめ、調達がままならず、手元に届いたものの、箱の中ですでにお亡くなりあそばしている仏花も決して珍しくありません。
自然相手のお商売は「需要と供給」のバランスが大きく崩れてしまう期間が、年間に何度も巡ってきますが、思い出すのはワタクシの子供の頃に聞いた、信心深い祖父の言葉…。
今回は祖父の言葉を思い出しながら、「常識ってなに!? 場所が変われば仏花も変わる」の解説です。
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仏様のお供えは花とは限らない
衣食住は土地柄というものが色濃く反映されますが、それはお花の世界も同じ。たとえば冠婚葬祭、特に仏様関係は、地域差をとても感じます。
全国にいるお花屋仲間と話していると、ワタクシがお花屋になった当初のカルチャーショックと同じ現象が変わらず存在し、いまでは微笑ましく感じます。そう、自分の常識は必ずしも世間の常識とは言えないのです。
どなたでもお墓参りやお葬式など、お供えの植物は、必ずしも花とは限りません。ましてや仏様に「菊」が決まりではないのでございますよ。
神道においては、神の世界と人間の世界の境の「境木(さかいき)」の役目を果たす神木として、古来より「榊」が供えられますが、関東から北では榊の代用として葉が小さなヒサカキ(緋榊・姫榊)を使用し、東海より南では、仏教用の菊仏花の背中に装着。
仏花を仏様に見立てるならば、背中のヒサカキは後光を表現しているらしい…。仏花においては、古(いにしえ)より生活に欠かせない花だからこそ、地方色豊か。お土地柄が色濃くでます。
「高野槙(こうやまき)ありますか?」
ごくたまに、和歌山出身の熱狂的真言宗の信者様とお見受けするお客様から問い合わせをいただきます。ウチ、神奈川なんですけどね…。
「禁忌十則」という規則によって果樹・花樹・竹・漆を植えることが禁止されている高野山。かの弘法大師が花の代用品として、高野山に自生する高野槙を供えたことが始まりらしいのですが、これがなかなか入手困難。パッと見は普通の木なのですが、そのお客様は高野槙を墓前や仏壇に供えると仰るのです。
忘れられない祖父の言葉
関西の地方によっては、お墓参りや葬儀、仏壇にシキミを飾るところもございます。ワタクシの実家は神奈川の城下町ですが、昔から仏壇もお墓もシキミ。決して嫌な香りではありませんが、仏間にはお線香と独特なシキミの香りが漂っていました。香木なので、シキミと呼ばずに香の花(コウノハナ)と呼んでおります。
徳島を訪ねた折、スーパーの店頭で売られていたシキミは、ポリバケツから盛大に飛び出し、根っこがついていました。「これは何?」と聞けば、「シキミじゃなくてシキビな。根っこごと墓の花立にお供えじゃ」とおっしゃる。あまりの豪快さにビビりました。
仏様の世界には青蓮華(ショウレンゲ)という花が咲いていて、シキミはこの青蓮華の葉に似ていると言われておりました。シキミも青蓮華もどちらも天竺(仏様のいる国:インド)に生えておりますな。
子供心になぜ我が家の仏壇の中に木が生えているのか(生えているのではなくお供えだったのですが)、信心深い祖父に聞いたことがありました。すると祖父はこう答えたのです。
「香の花(シキミ)は仏様の国の植物で日持ちもするからね。昔は人が死んだら棺桶の中に香の花を敷き詰めて匂いを消したんだよ。でも本当はどんな花でも仏壇に絶やさないことが一番大切なんだ」
子供の頃は「ふーん」でも、お花屋になったいま、祖父の言葉は身に沁みます。
暑さ厳しい日本の仏花事情
調べれば調べるほどケンミンSHOW的展開の仏花ですが、“常夏”のような日本の仏様事情は大きく様変わりしました。
仏花をお求めになるお客様の決まったリクエストは「日持ちする花」ですし、最近では本物の植物でなくてもOK! な風潮でございます。
毎日お墓参りが当たり前な土地柄では、お墓の花立には枯れない造花がインされています。手間もかからず、ずーっとキレイよ~。ドライ・ソープ・プリザーブドと生花ではない仏花が選びたい放題の世の中です。
「どんな花でも絶やさないことが大事」と話していた祖父にあの世で巡り会えたら、“予言していたの?”と聞いてみたいと思っています。
今月は、ご先祖様を身近に感じるお彼岸がやってまいります。ご先祖様がアナタをあの世からお守りしてくださいますことを…遠いお空の向こうからお祈りしておりますよ~。
(斑目茂美/開運花師)