「とりあえず付き合う」は古い? 恋愛経験ゼロの20代が増えた現代、私たちが見直すべき“たった一つ”のこと
恋愛経験ゼロの20代は珍しくない
恋愛未経験の若者が増えているのに、社会だけが“古い常識”のまま止まってはいないだろうか。「まだ?」という何気ない一言が、誰かの自尊心を奪っているかもしれない。
先日、友人の真由(33)がふと漏らした一言が気になった。
「うちの会社の新卒、半分くらい恋愛未経験なんだってさ。今ってそんな時代なんだね〜」
その瞬間、私は思わず、水野美紀さん主演のドラマ『初体験』を思い出した。あの作品では、27歳のバージン女性が“ちょっと変わった存在”として描かれ、周りの人たちが大騒ぎしていた。
けれど、あれから約20年。この国の恋愛事情は、静かに、しかし確実に変わっている。恋愛経験ゼロの20代。もはやレアキャラではなく、わりと“普通にそこらへんにいる存在”になった。
なのにーー社会はまだアップデートされていない。
会社の飲み会で「彼氏くらいいるでしょ?」。親戚の集まりで「まだ? 早くしないと」。友人の結婚式では「あなたも次だね〜」。
この“経験していて当たり前”の空気。これこそ、令和の恋愛をこじらせている元凶なんじゃないかとすら思う。
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「とりあえず付き合ってみる」はもう古い
真由の職場で話題になっていた若手社員たちは、別に「モテないから」未経験なのではなく、むしろ“慎重なだけ”なのだという。
ある20代男性は言っていた。
「相手の気持ちを傷つけたらどうしようって思うと、踏み出せなくて」
ある20代女性はこう言う。
「無理に恋愛しなくても普通に生活できるし、嫌な思いするくらいなら今のままでいいかなって」
私は思った。この世代、めちゃくちゃ真面目じゃない?
昭和・平成初期のように、“とりあえず付き合ってみる”“経験しないと一人前じゃない”みたいな雰囲気は、もはや古いのだ。
そして、驚くべきはこの“未経験の増加”が、決してネガティブな現象ではないこと。
「恋愛経験がない=魅力がない」という式は、今や完全に崩壊している。
むしろ、「恋愛経験が豊富」だからといって、幸せな恋愛ができるわけではないことは、アラサー以上の誰もが痛いほど理解しているはずだ。
経験値より大切なこと
恋愛経験は多いのに、毎回同じような失敗をする人。恋人は何人もいたのに、なぜか誰とも続かない人。逆に、未経験でもしっかり人の気持ちを考えられる人。
経験値より“人間性”のほうがよっぽど大事だ。ただ、社会の認識が古いままだと、未経験の人が無駄に自信をなくしてしまう。
真由の同僚にも、こんな子がいたという。
「周りがみんな恋愛してるっぽいから、自分だけ変なのかなって思ってました」
いや、変なのはむしろ、“経験してないと変”と思ってしまう空気のほうだ。
恋愛は義務じゃない。人生の必須科目でもない。
けれど、未だに「まだ?」と圧をかけてくる人は多い。そんな人に限って、恋愛をしてきた年数=偉さ、みたいな謎の偏差値表を持っている。
恋愛は数じゃなく、質
しかし現実は、恋愛経験が多くても、人を大切にできない人間は、いつまで経っても初心者だ。
逆に、20代で未経験でも、丁寧に人と向き合える人は、初恋の相手にとってかけがえのない存在になれる。
恋愛は数じゃなく、質だ。初めてが遅いことは恥でも何でもない。むしろ、「自分を大切にしてきた証」とすら言える。
そしてその慎重さこそ、未来の誰かを大切にできる強さにつながるのだと思う。
恋愛だけを人生の中心に置かず、生き方の選択肢を広く持てる若者は、本当はもっと肯定されていい。思うに、未経験の若者が増えているのは、“恋愛を軽く扱わない”という誠実さの表れだ。
だからこそ、私たち大人もそろそろアップデートしよう。
会うたびに「まだ?」と聞くより、「今はどんな生活してるの?」と聞いてほしい。
恋愛だけが人生じゃないし、経験の多さが人間の価値じゃない。
“恋愛経験ゼロが珍しくない時代”を、もっと生きやすくするのは、結局、人の口の使い方ーーこの一点に尽きるのだ。
(おがわん/ライター)

















