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溝口敦
著者のコラム一覧
溝口敦ノンフィクション作家、ジャーナリスト

1942年7月5日生まれ。早大政経卒 徳間書店、博報堂勤務を経て、フリージャーリストに。暴力団や闇の世界に深く食い込んだド迫力ルポには定評がある。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞、日本ジャーナリスト会議賞受賞。『暴力団』(2011年)がベストセラーに。

紀州のドン・ファン事件 覚醒剤1グラムで致死量に至るのか

 覚醒剤の使用者で口から飲み込んで摂取する者はいない。効き目が遠くなり、不経済だからだ。たいていは静脈注射か鼻でスニッフィングする。あるいは歯茎や性器の粘膜にすり込み、皮膚吸収で摂取する。

 紀州のドン・ファン、野崎幸助氏(享年77)の胃からは覚醒剤が検出されたという。テレビを見ていると、専門家は経口摂取でも、致死量は1グラムだと言う。本当か、と思う。というのは、静脈注射でも一度に1グラムを摂取して、平然としている者がまれにいるからだ。厚労省の麻薬Gメンから直接聞いた話であり、ウソではなかろう。

 1グラムを飲ませることで相手が死ぬなら、覚醒剤は押しも押されもしない毒薬である。1グラムなら食べ物や飲み物に混ぜることで、相手に気づかせずに一服盛ることが可能だろう。

 関西方面では仲卸から数グラム程度の覚醒剤を仕入れ、小分けして、使用者に直接小売りする末端売人を「コシャ」という。コシャはゴマンといるから、1グラム程度の覚醒剤を調達できる者など、無数だ。使用者の中にも一度に数グラムの覚醒剤を「おとな買い」する者など珍しくない。とすれば、野崎氏が殺されるチャンスは数多くあった。

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