元参議院議員 田村耕太郎氏が説く「感情のマネジメント」

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賢い人、出世する人は戦いをしない

 2014年の刊行以来版を重ね、多くの読者に支持されている本がある。「頭に来てもアホとは戦うな!」(朝日新聞出版刊)がそれだ。著者の田村耕太郎氏は元参議院議員で、現在はシンガポールを拠点にグローバルなビジネスを展開している。先日、一時帰国した田村氏に話を聞いてみた。

「頭に来てもアホとは戦うな!」とは何ともインパクトの強い書名だが、その内容は田村氏が長年のビジネス経験の中から学んだ「感情のマネジメント法」をまとめたもの。人間関係を自分の思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法について考察した、いたって真面目な、そして人生の参考になる本だ。

「僕の人生を振り返ってみると、アホな人と無益な戦いをやりすぎて失敗して多くの時間と労力を無駄にしてしまったなとの後悔があります。皆さんにそんな僕の失敗をシェアしたいという思いで書いたのがこの本ですが、おかげさまでこんなにも読まれているということは、それだけアホと戦っている人が多いということかもしれませんね」

■戦わずして勝つ

 本書で田村氏がアホな人と定義しているのは「あなたがわざわざ戦ったり、悩んだりする価値のない人間」「あなたにとって一見、目障りで邪魔な不条理な人物」であり、そして、「時として正当な理由もなくあなたの足を引っ張ってくる人間」「あなたに体当たりして絡んで、自分の価値を上げようとする人物」だという。たしかにどこにでもいそうな人間だ。

「僕はおばあちゃん子で、水戸黄門や大岡越前を見て育ったので、何か困ったことがあっても、最後には必ずいい人が現れて丸く収まると思っていました。いわゆる勧善懲悪、正義が絶対に勝つと信じていたんですね。ところが政界に入ってみると、それが大きな間違いであることに気がつきました。小池(百合子)さんのように、中には戦って勝つ人もいますが、賢い人、出世する人は無駄な戦いはしないのです。僕はそのことを『孫氏の兵法』からも学びました。そこには戦わずに勝つことが一番いいとあります。そして、勝つというのは目的を遂げること。相手と張り合ったり、勝つことばかりに目がいってしまうと目的を見失ってしまうのです」

戦うことは時間と労力の無駄

 国会議員時代、田村氏は自分に戦いを挑んでくるアホ、つまり相手にしなくてもいい人に対して、時間をかけて全て論破しようとしていたという。

「相手に対して正論を言えばいいかというと必ずしもそうではないし、説き伏せれば何とかなるかといえば、相手を怒らせるだけで、結局何にもならないんです。今思うと時間の無駄以外の何物でもなかったですね」

 もちろん、それは何も政界だけではない。どんな社会であっても、相手の肩書だけで判断しようとする人、出る杭を打とうとする人、本質ではないものにとらわれて相手を抑え込もうとする人など、田村氏のいうアホがいて、そういう人間と関わっているだけで大きなストレスを被ることになるわけだ。

「昔はアホな人に出会うとスルーすることが多かったのですが、最近では付き合い方次第では自分にとって役に立つアホな人もいることが分かってきたので、その人を何とかして自分のために利用しようと考えるようになってきました。ある意味、僕も成長したのか、あるいはズルくなってきたのかもしれませんね」

■本当にやりたいことに集中を

 最後に読者にメッセージをいただいた。

「僕がいいたいのは、自分と向き合い、自分が本当にやりたいことに集中して目的を達成してほしいということですね。さっきも挙げた『孫氏の兵法』には、目立たず相手に知られず目的を達成することが最高のことであるとあります。まさにその通りだと思います。誰かと戦うことや相手に勝って自分の気持ちをすっきりさせることは目的ではありません。たとえ相手に負けたとしても自分の目的を達成することのほうが大事だと僕は思っています」

たむら・こうたろう 1963年、鳥取県生まれ。早稲田大学、慶應義塾大学大学院、エール大学経済大学院などを修了後、山一證券、大阪日日新聞代表取締役、参議院議員などを経て現在、日本戦略情報支援機構代表取締役、国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院兼任教授。

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