決勝Tで相次ぐ延長戦 原因は「サッカーの均一化」にあった
【日刊ゲンダイ本紙コラム「王国インサイドリポート」】
〈この世にはマイナス方向の力が存在して、強いチームと弱いチーム、先制したチームと追いかけるチーム、すぐれた選手と劣った選手の格差を是正する〉
これは野球のセイバーメトリクスの創始者、ビル・ジェームズの著書「野球抄一九八三」の中の一節である。
今回のW杯ではこれと似たようなことが起こっている。決勝トーナメント1回戦全8試合のうち、延長戦に入ったのは5試合と半分以上である。なかでも地元ブラジルはチリ相手に延長戦でも勝負が決まらず、PK戦となった。かつてならば考えられなかった僅差である。
ビル・ジェームズが言うところの「マイナス方向の力」が働くようになったのは、W杯参加国の選手たちが普段から対戦することになったからだ。
きっかけは、90年代の欧州チャンピオンズリーグ(CL)の参加クラブ数拡大だった。高額なテレビ放映権料を得た欧州のクラブに金と才能が集まるようになり、さらに旧ソ連圏へとCLが広がり、その傾向に拍車が掛かった。ドイツリーグが外国人枠を緩和したことも大きい。日本を含めた多くのW杯参加国の選手は国内リーグや欧州リーグで対戦し、ある程度手の内を知る仲となった。