国内では6年ぶり プロボクシング「日韓対抗戦」観戦ルポ

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 日本政府が韓国に対し、スマートフォンやテレビに使われる半導体材料で対韓輸出規制を強化すると発表する、戦後最悪といわれる日韓関係。その一方、プロボクシング界では6年ぶりに(単独興行では初めて)日韓対抗戦が開催されていたことはあまり知られていない。サッカー代表による国際試合では毎度独特の熱気を帯びる日韓戦だが、はたして会場の後楽園ホールはどのような空気だったのか。

  ◇  ◇  ◇

 日韓戦の興行名は「2019・6・25 DANGAN日韓親善試合」で、主催者はDANGAN(東京都・古澤将太代表取締役)。親善試合前のアンダーカードは5試合。女子日本ミニマム級タイトルマッチ(日向野知恵×千本瑞規=千本が判定勝ちでチャンピオンに)を締めに、日韓親善試合4試合が組まれた。ちなみに最近は女子ボクシングの層も厚くなり人気も定着してきている。会場は8分の入り。

■親善試合はどちらが勝ったのか

 親善試合はすべて6ラウンド制。まず第1試合はスーパーフライ級、チャン・インス対高山涼深。試合は2ラウンド早々、高山のカウンターが入り、インスはTKO(レフェリーストップ)。しかしその後、場内は騒然とする。インスのセコンドがレフェリーの判断に猛然と抗議を始めたからだ。第1試合から韓国側の勝負への執着が垣間見える。場内の日本人客からは「レフェリーの指示に従え!」という声も飛び出す。しかし、しばしもめるとセコンドはリングを下りて一件落着。

 第2試合はライト級、イ・ドジン対内藤未来。サウスポー同士の対決だ。未来の父親は、カシアス内藤(元東洋ミドル級チャンピオン)。未来の兄である内藤律樹もプロボクサー。東洋太平洋(OPBF)スーパーライト級チャンピオン。当日は未来のセコンドについた。

 律樹もまた8月15日に韓国人選手と試合をすることになっている。3度目の防衛線の相手はジョンギュボム選手。内藤律樹の父、カシアス内藤は1978年、ソウルでおこなわれた東洋太平洋ミドル級王者決定戦で朴鐘八にKO負けを喫している。その物語はカシアス内藤を主人公にした沢木耕太郎のノンフィクション「一瞬の夏」で克明に描かれている。韓国は内藤ファミリーにとって因縁のある国、土地である。

 未来はこの日、入場曲にアリスの「チャンピオン」をかけながらリングにあがった。「チャンピオン」はカシアス内藤をモデルに作られた曲だという。サウスポー同士の戦いとなった。コンパクトにまとめてボディを狙い続ける未来。韓国応援団も次第にヒートアップ。3-0で未来の判定勝ち。

 第3試合はイ・サングン対友松藍。アマチュアで50戦41勝をしている友松藍はこれがプロデビュー戦。アマチュアの全日本選手権ではライトヘビー級だったところ、今回は71キログラム契約の試合。上半身刺青だらけでギャングのようなイ・サングンは35歳ながら新人王で6戦6勝4KO。

 ゴングが鳴ると、イが仕掛ける。オーソドックス・スタイル同士の打撃戦に。3ラウンドでダメージを受けたイにあわやわレフェリーストップか、という場面もあったが、レフェリーは1試合目の抗議があったためか試合は続行。最終ラウンドはまさにド突き合いとなった。両者はふらふらになりながらも手数は落とさず判定決着。終始、試合の主導権を握っていた友松の判定勝ちに。韓国選手の精神力の強さをまたしても感じる一方、友松もプロデビュー戦とは思えない堂々とした打ち合いだ。

 会場では親善試合の空気も読めてきたのか、試合終了後には両選手の健闘をたたえる拍手がホールを埋め尽くした。

 メインイベントはスーパーライト級、チャ・ジョンハン対小林孝彦。チャはサウスポー。韓国勢は三連敗で負け越しは確定しており、一つは勝ちたいところ。ジョンハンはいらだったのか、1ラウンドで小林を抱え投げてしまう。リング上で痛がる小林。反則行為は明らかだが、日本勢が圧倒的優位な試合となったためかレフェリーは軽い注意ですまし、減点なし。私の席の後ろからは「フザざけんな!」「倒せ!」などという声が男女問わず漏れる。

 小林が体勢を立て直し、試合は続行。2ラウンドに小林の左フックがカウンターで入り、チャはダウン。小林のラッシュに4ラウンドレフェリーストップ。日本が4戦全勝。場内からはしてやったりの歓声が漏れた。

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