岡邦行
著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

東京五輪の開会式 2人の遺影をポケットに忍ばせ行進した

公開日: 更新日:

1932年ロサンゼルス五輪・三段跳び・銅メダル 大島鎌吉さん(下)

 昨年12月14日、石川県金沢市。「弁当忘れても傘忘れるな」のことわざ通り、朝は晴れていたが、昼前には曇天になり、午後になると雨に見舞われた。

 この日、私は大島鎌吉の菩提寺である、金沢市の経王寺にいた。

 大島の功績を称える「大島鎌吉スポーツ文化金沢研究会」が、「大島鎌吉顕彰碑」を建立。その除幕式が経王寺で行われたからだが、そこで大島の思わぬ逸話を耳にした。

 研究会発起人の一人、片桐真佐紀さんが話してくれたのだ。

「東京オリンピックの前年の夏です。金沢高から立教大に入学した自転車競技のオリンピック強化選手の小畑糺さんがヨーロッパ遠征に行く途中、インド洋上で飛行機事故に遭って亡くなっています。それを知った大島さんは心を痛め、1年後の開会式のときに小畑さんの遺影をポケットに入れ、行進しているんです」

 事実、63年7月29日にインドで、小畑糺は飛行機事故で死亡していた。それもヨーロッパ遠征直前に落車でケガ。先に出発した本隊に遅れて出向いての、不運な死だった。

 そのため悔やんだ日本アマチュア自転車連盟は、10月10日の五輪開会式で着用するブレザーコートを遺族に贈り、同郷である選手団団長の大島はポケットに遺影を忍ばせ、入場行進に臨んだのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

  2. 2
    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

  3. 3
    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

  4. 4
    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

  5. 5
    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

  3. 8
    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

  4. 9
    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

  5. 10
    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず

    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず