著者のコラム一覧
本多正識漫才作家

1958年、大阪府生まれ。漫才作家。オール阪神・巨人の漫才台本をはじめ、テレビ、ラジオ、新喜劇などの台本を執筆。また吉本NSCの名物講師で、1万人以上の芸人志望生を指導。「素顔の岡村隆史」(ヨシモトブックス)、「笑おうね生きようね いじめられ体験乗り越えて」(小学館)などの著書がある。新著「1秒で答えをつくる力──お笑い芸人が学ぶ『切り返し』のプロになる48の技術」(ダイヤモンド社)が発売中。

シャツとステテコ姿の島田洋七さんが「自分(君)腹減ってるやろ!」

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島田洋七の巻(上)

 1980年代。B&Bとして「もみじまんじゅう!」というギャグと機関銃のようなボケの連発でツービート、紳助・竜介らともに漫才ブームを牽引、累計1000万部を超える大ベストセラー「佐賀のがばいばあちゃん」シリーズを書かれた島田洋七さん。初めてお会いしたのは、96年か翌年のお正月のうめだ花月の楽屋でした。

 当時のお正月興行は10時から20時ぐらいまで行われていたと記憶していますが、舞台が終わって打ち合わせで訪れると、劇場の前に見たこともない大きな外車のオープンカーが止められていて、「これ誰の車や!? こんなとこへ止めて」と呆れながら楽屋に入ると、突然、聞きなじみのある声で「自分(君)腹減ってるやろ!」と後ろから声をかけられ、振り向くと、シャツとステテコ姿の洋七さんが、アルマイト製の大きな鍋を持って立っておられてびっくり!

 慌てて「おはようございます! 大丈夫です」と答えると「遠慮せんでええがな、器(紙製?)と割りばし舞台持ってきて」と言われ、訳もわからぬまま「わかりました」と答えて、近くにあった紙袋を持って舞台へ。明かりがともる舞台には、何枚かゴザが敷いてあり、何人かの進行係の若い子たちが待っていました。洋七さんは「できたでできたで」と鍋敷きの上に大きな鍋を置かれて、フタをとると湯気の立ち上る“煮しめ”がぎっしり。それを器にとりわけながら、大きな声で「飯食べてへん子みなおいで~! 食べよ食べよ」と呼びかけられて劇場スタッフや弟子っ子が十数人集まり、成り行き上、私もその中に入り、ごちそうになりました。

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