大リーグ地区優勝を手にする日本人は誰?メジャー通が占う

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田中将大は契約切れで目の色が変わる

 日本時間27日に予定されていた開幕の延期が決まったメジャーリーグ。開幕は5月中旬以降が有力視されているが、予定通りにレギュラーシーズンが行われるとしたら、今年のポストシーズンは、日本人同士による対決が実現するかもしれない。

 田中将大のヤンキース、筒香嘉智のレイズ、前田健太のツインズが、開幕前の下馬評でア・リーグの地区優勝候補に挙がっているからだ。

 東地区連覇を狙うヤンキースは、右腕セベリーノ、左腕パクストンのローテーション投手2人に加え、外野手ではスタントン、ジャッジの長距離砲2人が開幕絶望。正捕手サンチェスは腰痛を訴えて復帰の見込みすら立っていない。

 オフに投手2冠のコールを総額約356億円で獲得して戦力の上積みを図ったはずの先発陣は一転して手薄に。チームの浮沈はコールに次ぐ先発2番手の田中にかかっているといっても過言ではない。

「今季の田中はシーズン終了後に契約が切れるため、モチベーションが高い。オープン戦を見る限り、結果を残して、来季以降の契約につなげようと目の色が変わっていることがうかがえます。正妻のサンチェスを欠いても田中は、控え捕手の日系4世、ヒガシオカとの相性は悪くありません(2018年の捕手防御率2・84)。日系捕手とのコンビネーションが良ければ、田中は15勝はすると思う」(スポーツライター・友成那智氏)

 さらなるプラス材料は、宿敵レッドソックスによるサイン盗みが根絶されそうなことだ。特に田中は昨年6月、ロンドンでの公式戦で3分の2回を6失点と炎上し、対レッドソックス戦の防御率は24・75と目も当てられなかったが、今季は大幅な改善が見込める。

「田中はもちろん、ヤンキースナインはレ軍の不正に怒り心頭とか。選手の多くが『我々は正々堂々、勝負してボストンをねじ伏せるしかない』と口をそろえているといいます。これまで以上に敵対心をむき出しにして臨むでしょう」(友成氏)

レイズ97勝、ヤンキース90勝でPS進出

 このヤンキースと熾烈な争いを繰り広げるのが同地区のレイズだ。投打とも充実した戦力で、台風の目として位置付けられている。

 18年のサイ・ヤング賞左腕のスネル以下、4番手まで計算できる先発陣に加えて、救援陣も守護神アンダーソン、セットアッパーのアルバラードら奪三振率の高い剛腕がそろう。今オフは筒香の他、レンフロー(昨季33本塁打)、マルティネスの外野手3人を補強し、打線の強化を図った。

 さらにレイズは複数ポジションをこなす選手が豊富なため、大半のポジションで併用できるのは強み。選手の状態を見ながらの起用も可能で、故障者防止にもつながっている。

 筒香はオープン戦で、外野に加えて三塁守備も試していたが、2つ以上の守備位置を守れれば出場機会に恵まれ、打撃にも良い影響を及ぼすはずだ。

 友成氏はア・リーグ東地区の優勝ラインを95勝とみており、「レイズが97勝、ヤンキースは90勝でポストシーズンに進出する」と予想する。つまり、地区優勝の可能性はヤンキースよりレイズにあるということだ。

一強多弱で連覇

 マエケンのいるツインズは昨季、大リーグ記録の307本塁打をマークした強打が健在。それだけに相手バッテリーのマークは厳しくなるだろうし、昨年ほどの本塁打は計算できないものの、昨季37本塁打のドナルドソン(前ブレーブス)の加入で打線はさらに厚みを増した。

 強力打線の援護が期待できるだけに、前田らの先発陣は順調に勝ち星を伸ばしそうだ。

「中地区は戦力的に見てツインズが頭ひとつ抜けており、1強4弱。故障者が出ない限りはツインズの連覇は堅い」とは友成氏だ。

投打を補強したエンゼルスは?

 昨年まで2年続けて西地区4位に沈んだ大谷翔平のエンゼルスは、オフに投打を補強。戦力は確実にアップした。

 昨季、ナショナルズの主砲として34本塁打、126打点でワールドシリーズ制覇に貢献したレンドンをFAで獲得。投手は、先発として実績のあるテヘラン(ブレーブスからFA)とバンディ(前オリオールズ)の2人を補強したのはデカい。野球文化学会会長で名城大准教授の鈴村裕輔氏はこう言う。

「主砲のトラウトは過去3年間、出場時は活躍するも、故障者リスト入りを余儀なくされるなどシーズンを通じて活躍していません。打線はトラウト頼みの部分が大きいだけに離脱はかなりの痛手でしたが、レンドンの加入でトラウトの負担は軽減されます。昨年は先発陣総崩れ、2ケタ勝利がひとりもいなかった投手陣ですが、テヘラン、バンディの2人に加え、カニングやサンドバルら昨季先発に加わった投手が定着するようなら層は厚くなります。救援陣はトミー・ジョン手術から復帰したミドルトン、抑えのロブレスを中心に安定感がありますから」

 今季、二刀流復帰が予定されている大谷に関しては、「年間を通じて故障しなければDHとして300打席程度は出場できる。投手として5月中旬の復帰が実現すれば、ローテの谷間ないし先発5番手に食い込める」(鈴村氏)とみる。

 今季からア・リーグで2回、ナ・リーグで1回最優秀監督賞を受賞したマドン監督が指揮を執るのもプラス材料だ。

 それでも「チームはワイルドカードを視野に入れた地区優勝争いが可能でも、相対的には4年連続地区優勝を目指すアストロズが優位」(鈴村氏)だそうだ。

秋山所属のレッズは一昨年まで4年連続最下位

 ナ・リーグ中地区はどうか。米メディアによればダルビッシュ有のカブスと、秋山翔吾のレッズの評判が良い。

 中でも一昨年まで4年連続地区最下位だったレッズを優勝候補に挙げるメディアもあるが、「カスティーヨ、グレイ、バウアーと200奪三振が期待される先発3人がそろっているうえ、野手はカステヤノス、ムスターカスという強打者を補強。秋山が1番ないし2番に定着するようなら打線の幅は広がります。ただ、スアレス、カステヤノス、ムスターカスの中軸に、かつてのボットに代表されるような確実性があるとは思えない。投手陣に比べて打線は不確定要素が強いため、地区優勝は難しい」とは鈴村氏。

カブス地区優勝の条件は

 そして「カブスは抑えのキンブレルが昨季の不安定な状況から脱出するようなら地区優勝を狙えます」と、こう続ける。

「先発はいずれも勝ち星が計算できる顔触れ。ダルビッシュも昨年後半の質の高い投球が維持できれば、主戦として15勝は堅い。ブライアント、シュワバー、リゾを中心とした打線は切れ目がなく長打が出て、なおかつ安定感もある。主力の最年長がリゾとヘイワードの30歳という若さも伸びしろが大きいですから」

 したがって地区優勝を手にする可能性が高いのは筒香、マエケン、ダルの3人だ。

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