読書の達人に学ぶ編

公開日: 更新日:

 ジャーナリストの立石泰則氏は好きな作家の全作品を読破しているが、松本清張の芥川賞受賞作品「或る『小倉日記』伝」を読んで感銘を受け、2冊目に処女作の「西郷札」を選ぶ。西郷札とは西南戦争のとき、軍需物資調達のために西郷軍が作ったお札のことだ。芥川賞受賞作品の方が完成度は高いが、処女作には「自分が書かなければ誰が書く」という気迫があふれている。

 フリーライターの井上理津子氏は、酒席で福島県出身者から「阿武隈地方では最高級のあんぽ柿を天ぷらにする」と聞いて、農林水産の専門図書館、農文協図書館で農山漁村文化協会の「聞き書 福島の食事」を手に取った。確かに〈干し柿の天ぷら〉がある。事務局長が「宮本常一講演選集」(農文協)にも書かれていると教えてくれた。それによると、女性が嫁入りのときに渋柿を植え、柿渋を防腐剤として利用したり、死ぬとその枝で火葬する風習があるのだとか。柿の木が女の一生に寄りそうことを知って、心が熱くなった。

 そういう、心を熱くしてくれる〈次の本〉はあなたが選んでくれるのを待っているのだ。

(苦楽堂 1800円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  1. 6
    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

    悠仁さまは推薦入学で東大を目指すも…名門・筑波大付属高校が持つ「4人」の枠に入れるのか?

  2. 7
    元Kis-My-Ft2“辞めジャニ”北山宏光の大誤算…ソロコンサートのチケットが売れない!

    元Kis-My-Ft2“辞めジャニ”北山宏光の大誤算…ソロコンサートのチケットが売れない!

  3. 8
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  4. 9
    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

  5. 10
    岸田首相の起死回生策? 国会閉幕後に囁かれる「オールスター内閣改造」は成功するのか

    岸田首相の起死回生策? 国会閉幕後に囁かれる「オールスター内閣改造」は成功するのか