「原節子の真実」石井妙子氏

公開日: 更新日:

小津安二郎作品とは異なる、強く激しい女優・原節子の生きざま

 “永遠の処女”とうたわれ、昭和の日本人にもっとも愛された女優・原節子。全盛期に忽然と銀幕を去り、以降50年以上にわたり世間にその姿を見せなかった伝説の女優は、昨年末、95歳でその生涯を閉じた。

「3年前から彼女の評伝の執筆を開始し、折に触れてご自宅に伺っていましたが、同居する甥御さん夫婦が丁寧に対応してくださるものの、ついに原節子さんにお会いすることはかないませんでした。そのためか、訃報を耳にしたときには、亡くなった事実よりも、確かに彼女はこの世界に生きていたんだということを、逆に強く実感したことを覚えています」

 本書は、伝説や臆測に惑わされることなく、時代に埋もれた原節子の肉声のみを丹念に拾い集めることでつづられている。そこに浮かび上がるのは、多くの日本人がイメージする控えめな大和撫子の姿ではなく、強く、激しい女優の生きざまだ。

「原節子といえば小津安二郎作品を思い浮かべる人が多いと思いますが、これは女優としては後半の話。彼女のデビューは14歳で、戦前から数多くの映画に出演していました。10代の頃は本人いわく、『私は大体ぶすっとしていて、ひとに好かれるような愛嬌はありませんでしたから、特別にかわいがって貰うようなこともなく、かえって気が楽でした』(「映画ファン」昭和27年12月号)というように、決して社交的ではなかったようです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋