「DIY葬儀ハンドブック」松本祐貴著/駒草出版

公開日: 更新日:

 ティッシュや醤油といった日用品や食料品の値段はよく分かっている。ただ、葬儀となると、経験する機会が少ないので、相場がよく分からない。しかも動揺していることもあって、葬儀社に言われるままに葬儀を進めて、結果的に大金をとられることが多い。かくいう私も、父の葬儀の際には、数百万円の費用をかけてしまった。

 本書は、葬儀にかかる費用だけでなく、臨終、遺体搬送、安置、火葬、納骨、法要、通夜・告別式と、順序を追って葬儀の手順を解説したものだ。著者自身の体験を踏まえて書いているので、内容が具体的で、とても分かりやすい。そして、タイトルにDIYと付いていることから分かるように、葬儀をできるだけ自分自身で行うことも想定して、書かれている。

 私はまったく知らなかったのだが、最近では家族葬のほかに「直葬」というのもあるそうだ。遺体を病院の安置室から家や葬儀場に搬送するのではなく、直接火葬場に搬送してしまう。火葬場にも安置室はあるから、お別れの時間は短くなるが、このやり方だと健康保険から給付される火葬費などを差し引くと3万円程度で済んでしまうそうだ。

 また、本書は、お布施や戒名料の相場など、普通は言いにくいところまで踏み込んで書いている。さらに、例えば死亡届や死亡診断書は複数枚コピーを取っておくと、遺族年金や銀行の手続きなどのときに役立つといった、どこまでも実践的なアドバイスであふれている。

 本書を読んでいて感じたのは、祭壇を豪華にしたりして葬儀に大金を投じるよりも、故人と親交のあった人たちを集めてお別れの会を催したほうが、ずっとよいのではないかということだ。

 私の父は大学教員をしていたのだが、葬儀の際に教え子たちが集まって図らずも同窓会になり、葬儀場は、旧交を温めるゼミ生たちで、どんちゃん騒ぎになった。でも、それが一番よい送り方だったような気がする。

 本書は短時間で読めるので、とりあえず目を通しておいて、本棚に並べておくのがよいと思う。死亡後の手順が一目で分かるようにきれいに整理されていて、いざというときに必ず役に立つこと請け合いだからだ。 ★★半(選者・森永卓郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

    真美子夫人も共同オーナーに? 大谷「25億円別荘購入」の次は女子プロバスケチーム買収か

  3. 3
    無垢で可愛かったのに…元有名子役・若山耀人逮捕の衝撃! NHK大河「軍師官兵衛」にも出演

    無垢で可愛かったのに…元有名子役・若山耀人逮捕の衝撃! NHK大河「軍師官兵衛」にも出演

  4. 4
    岸田首相含め政務三役31人、渡航費用12.6億円!円安放置し“血税ごっつぁん”外遊三昧のア然【リスト付き】

    岸田首相含め政務三役31人、渡航費用12.6億円!円安放置し“血税ごっつぁん”外遊三昧のア然【リスト付き】

  5. 5
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  1. 6
    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

  2. 7
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  3. 8
    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

    仲野太賀に注目!NHK朝ドラ「虎に翼」で寅子と結婚…そして、もうすぐ“優三ロス”が起こる

  4. 9
    若林志穂さん「Nさん、早く捕まってください」と悲痛な叫び…直前に配信された対談動画に反応

    若林志穂さん「Nさん、早く捕まってください」と悲痛な叫び…直前に配信された対談動画に反応

  5. 10
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前