「WE HAVE A DREAM WORLD」DREAM PROJECT編

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 それぞれの国や地域でSDGsの達成に取り組む若者たちの「夢」を、そのポートレートと共に紹介するビジュアルブック。

 近頃、目にしない日はない「SDGs」とは、国連サミットで採択された持続可能な開発を目指す2016~30年の国際目標のこと。「貧困をなくそう」にはじまり、「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」など、それぞれが独立しながらも、深くかかわり合う17のゴールを定めている。

 ケニアに暮らす24歳のステファン・オグウェノ氏の夢は、がんや糖尿病、慢性的な肺疾患、心血管疾患など人から人に感染しない「非感染性疾患(NCDs)」の情報不足が引き起こす死と苦しみがない世界を見ること。

 高校時代から親しい人を病気で失ってきた氏は、大学時代にNCDsに関する情報に誰もが自由にアクセスできる組織をつくろうと動き出す。失敗もあったが、彼がつくった会社が実施したプロジェクトで開発したアプリで、これまで200万人以上に情報を届けてきたという。

 彼は、怖くても、迷っても、1人でも、「何よりも大切なのは行動することだ」と訴える。

 紛争終結後もアルバニア人とセルビア人の分断が続いたままのコソボに暮らすディエルザ・ゲチさんとアンジェラ・ミルコヴィッチさんの夢は、疎遠になっているそれぞれのコミュニティーをまとめ、祖国を真の多民族国家として成長させること。

 2015年、入学した大学で出会ったアルバニア人のディエルザさんとセルビア人のアンジェラさんは、お互いの民族が紛争時に経験したことを共有する中、自分のコミュニティーで語られてきた証言だけに耳を傾けていては、悲劇の全体像を知ることはできないと気づき、民族を超えて若者を団結させるための新しい方法の必要性を感じて行動を始める。

 その他、性別や肌の色、階級に関係なくすべての人に自分の能力を発揮するチャンスが与えられる世界を夢見て活動するルクセンブルクの最年少政治家ヤナ・デグロットさん(25歳)や、すべての国が友だちである世界、そのための懸け橋に自国がなることを夢見て国際関係学を学ぶ総面積約60平方キロのミニ国家サンマリノ出身のセバスチャン・ブシニャーニ氏、そして13歳で脱北して命がけの逃走後に韓国とアメリカの大学で学び「すべての人に自由を」と訴える朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)出身のヨンミ・パクさんなど、201カ国202人の若者がそれぞれの夢を語る。

 登場する若者たちの多くが「目の前の人を大切にする優しさから夢が始まり、自分の手が届く小さな世界から行動を始めて」いる。本書は「誰ひとり取り残さない世界は、誰にでもできることがある世界」だと説く。

 彼らの夢がかなったとき、世界にはどんな風景が広がっているのだろうか。

 もちろん夢を見るのは若者たちだけの特権ではない。夢を見るのに年齢制限はないのだから。

(いろは出版 2860円)

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