監督3作目 精神科医・和田秀樹氏が“夜の銀座”を撮った理由
精神科医は病気を治す職業。見る人の心に響く撮り方などは漠然と分かっているつもりですが、監督業に直接的に役に立つということはないですね。映画とは計算通りにいかないところがありますから。ただ、映画を本当に撮りたいという情熱は強く持っています。トシを取ってから映画を撮っている以上、それを利用するような映画を撮らなければ、ね。
今回、ご縁があって倉科遼先生原作の銀座のクラブを舞台とした作品を手がけました。僕はつねづね映画の舞台となる世界を疑似体験したかのようなあらゆる情報が詰まっていて、ラストは泣かせてくれる、そんな映画を作りたいと考えてきました。伊丹十三監督のような作品です。つまりね、東映のB級モノと伊丹作品がドッキングしたような世界観を表現したいんです。
「アンダルシア」は主人公のモデルとなった男性オーナーが主人公です。銀座初心者がこれが銀座なんだと分かる作品にしたかったんですが、いい仕上がりになったと自負しています。
僕自身、倉科先生ほど銀座に通い慣れているわけではありません。知っているのは倉科先生に連れられて行った店ばかりだし、だから、自分ではデカい顔ができない。それが銀座のルール。自分の係の女の子を探すには、どこかの店にふらっと入って開拓するしかないわけですね。でも、どうせ洗礼を受けるんであれば、あらゆる男を手玉に取るような、将来、銀座ナンバーワンの“女傑”となる女性にお相手いただきたいかな。(談)