大塚署を出るその時…たけしさんが軍団に向かってボソリと
それどころか、やはりまたどこか襲撃からのイベント気分が抜け切れていなかったのか。感動を覚えていたのは決して嘘いつわりではなかったが、同時にオレはその時「カッコいいたけしさん!! 必ずこの事件は将来、映画やドラマになるだろうなあ、ウ~ム、となるとオレの役を演じるのはだれであろう? できることなら実力派の中井貴一さんとか、いや渋さもある佐藤浩市さんあたりを希望したいなあ~」と妙に冷静に考えていたのだった。
ところが、その思考は冷静さからはかけ離れたモノであることを、後日気づくこととなる。それは、中井貴一さんも佐藤浩市さんもオレと同世代で、30年後にはオレと同じく年配になっているということにまったく気づかずにいたのだ。ま、そのくらい、若かりしあの頃のオレには衝撃的な場面だったのかもしれない。
大塚署の裏口の扉は開けられた。光! 白! 光!白! 光! 白!
そこは白い光の世界だった。数百台のマスコミのカメラのフラッシュが一斉につくり出した、まぶしく光る白い空間にオレは包まれ、そして溶け込んでいった。その中をそれなりに必死に泳ぎ、気がついたら2019年1月3日、還暦の60歳を迎えていた。ということでここからはクルクルクル……カタン! と、オレの60年の人生ルーレットをお届けするのだ。
現在、過去、未来(はない、ない!)は。さてどうなることやら。 (つづく)