「ヒトラー~最期の12日間~」妄想と怒声…独裁者の末路
ヒトラー~最期の12日間~(2004年 オリバー・ヒルシュビーゲル監督)
ヒトラーの自決を描く。ブルーノ・ガンツの演技が凄い。
1942年、22歳のトラウドゥル(アレクサンドラ・マリア・ララ)はヒトラー(ガンツ)の秘書採用試験に合格。彼女を主要人物のひとりとして物語が進行する。場面は飛んで45年4月。ベルリンはソ連軍の猛攻を受ける。敗戦は確実。ヒトラーは地下壕(ごう)で軍幹部らに戦況を問い詰め、兵力もないのに「反撃しろ」と机上の空論の戦術を命じて怒鳴り散らす。末期的状況の中、ヒトラーは恋人のエバ・ブラウンと結婚し、最期を迎えるのだった……。
滅びの映画だ。市民は砲撃で吹っ飛び、軍医は負傷者の手足を切断。病院は裸の死体の山。自治団はなおも市民を裏切り者として縛り首にする。ヒトラーの怒声に女性は絶望の涙だ。
ヨーロッパを蹂躙(じゅうりん)しユダヤ人を虐殺した帝国の末路は悲惨きわまりない。だがヒトラーとゲッベルスは責任を感じるどころか、国民を「自業自得だ。同情しない」と切り捨てる。しかもこの戦争をユダヤ民族との戦いと美化する。どう見ても狂っている。