原田曜平
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原田曜平マーケティングアナリスト・信州大学特任教授

1977年、東京都生まれ。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から信州大特任教授。

令和のハゲに希望はあるのか ブラマヨ小杉竜一に訊いた

公開日: 更新日:

 今回のゲストはブラックマヨネーズの小杉竜一さん。原田さんと小杉さんに共通するのが人類の永遠の悩みともいえる薄毛問題。そこで、お笑い界の“トップランナー”である小杉さんに“令和のハゲに希望はあるのか?”という究極のテーマについて訊いた。(編集部注=この対談は3月上旬に行われたものです)

■「ハゲをご法度にしなかった最初の若手芸人は僕だという自負」

原田「小杉さんとは明石家さんまさんがMCの『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)で共演させていただき、“ハゲつながり”をきっかけに仲良くなりました。今回は『令和のハゲに希望はあるのか?』という究極のテーマでお話を伺いたいと思います」

小杉「光栄です(笑い)。お笑い界の薄毛に関してはトップランナーですから」

原田「早速ですが、いつ頃から?」

小杉「“そちら”の世界へ、ですか(笑い)。20代後半からアレ? と。それでも他人から指摘されることはなかったんですけど、ある日、(相方の)吉田とネタ合わせの時、僕がうつむき加減でネタ書いてたら、『おまえ、もしかしてハゲてきてないか?』と。人から指摘されたのは初めてでした。それまではサラサラの吉田栄作ヘアでしたから」

原田「僕は結構早くからで中2の時。通っていた塾でハゲてる先生にハゲというあだ名をつけられて傷つきました」

小杉「今だったら、大問題ですよ(笑い)」

■「就活のときM字を心配した母親が…」

原田「大学3年で就職活動をする時にはかなりM字ハゲが進行してました。そしたら就活の妨げになってはいけないと母親がある商品を買ってきたんです。ご存じかと思いますが、薄毛部分にポンポンと叩いて黒くて細かい繊維を付着させ、髪が増えたように見せるアレです。そのおかげか、無事に博報堂という広告代理店に入社できたんですけど、ある意味、会社をだまして入ってしまいました。毛歴(経歴)詐称ですね(笑い)」

小杉「まあまあ、それは詐称のうちには入りませんよ。ところで実際の効果はどうなんですか?」

原田「ひとつ、大きな弱点があるんです。僕は出身が慶応大学だったのですが、周りにお金持ちの子弟が多かったんですね。で、先輩の家に遊びに行ったら地下室がクラブみたいになっていてブラックライトで照らされたんです。そしたら振りかけた粉の部分だけが反応してピカピカピカと」

■出身は慶応大と京都・桂

小杉「なんで薄毛を隠したやつの頭を光らすねん! しかも、原田さん、毛少ないのに慶応(毛多い)って! 僕も実家は京都の桂(カツラ)ってところですけど(笑い)。しかし、何かをごまかすっていうのは、この令和の時代、ダメですね。それが許されない時代になってきました」

原田「後からバレると大ごとになりますよね。小杉さんがハゲを自覚し始めた20代後半の頃はどうでしたか?」

小杉「そりゃあ、ごまかしまくってましたよ。当時、僕たちが出てた劇場は中高生のお客さんが中心。投票で出番が減ったり増えたりするシステムだったので、キャーキャー言われてなんぼっていう。吉田は昔から人にどう思われてもいいというスタンスなので、『キャーキャーはおまえに任す』と。当時は僕もシュッと痩せていて、木村拓哉さんみたいなパーマを当ててたんです。でもファンを獲得しなくちゃいけない立場なのにハゲてきたので、髪をセットする時にはなるべくふんわりとエアリーにしていました。当時は、同期たちに『綿菓子のオッサン来た』『ふくらましとるで』とイジられてましたけど……」

笑えるか否か

原田「受け入れ始めたのはいつ頃から?」

小杉「実は30歳くらいの時に、受け入れざるを得ない状況になったんですよ。若手でロケに行って、最後に僕が海に落とされて『小杉ハマったー』というオチで終了するはずだったんですけど、『小杉ハマったー。アレ? ハゲてるやん!』と気付かれまして。吉田はそれまで黙っていてくれたのですが、ダムが決壊するがごとく、周りにイジられ始めました。もう受け入れるしかないですよね」

原田「ポジティブになっていったのは、いつ頃からですか?」

小杉「僕は自分からハゲをネタにしたりキャラクターにしたりというのは、一回もないんです。本当なら、木村拓哉さんや竹内涼真君みたいに振る舞いたいんですよ。でも、それは周りが許しませんから。これは僕の持論なんですけど、『僕、ハゲてますねん!』と自分で開き直ってしまったら、お客さんに笑ってもらえなくなるんじゃないかと思ってるんです。『俺は男前やし、毛生えてるやつに負けへん』という気概のあるイケメンのハゲが、イジられても堂々と言い返していない限り、笑えないんじゃないかなと。長らくそう思っていたところに、トレンディエンジェルの斎藤ってやつが現れて、僕も考え方が変わってくるんですけどね」

原田「斎藤さんはハゲを武器にして出てきましたからね」

小杉「斎藤に『自分と同じようにハゲている小杉さんがやっていないことは、開き直っていないこと。だからこそ、僕は開き直ったんです』と言われたことがありました。でも、ハゲをご法度にしなかった最初の若手芸人は僕だという自負はあるんです。だから、そこは野茂英雄みたいな気持ちでいます」

原田「確かにパイオニアですよね。薄毛トルネード(笑い)」

子供が「髪型変えへんの?」と

原田「プライベートではどうですか? 僕はすごく傷ついたことがありまして。結婚する前ですが、当時の彼女からのクリスマスやバレンタインのプレゼントが帽子だったんですよ。最初にもらったときに『ありがとう。でも、帽子はかぶらないから』と言ったはずなんですけど、毎回帽子。さすがにアレ? と」

小杉「はよかぶれや! なんでかぶらへんねん!って思っていたんでしょうね(笑い)」

原田「聞いたら『一緒に歩くのが恥ずかしい』と率直に言われまして。ちょっとしたトラウマになりました」

小杉「きちんと言ってくれたからまだいいですよ。『いや、似合うと思って……』みたいにごまかされたら逆に嫌だもんなぁ」

原田「ご家庭ではどうですか?」

小杉「僕が嫁と出会った頃は、もうブラックマヨネーズだったしハゲていたけど、子どもに関してはやっぱりね~。ただでさえ普通のお父さんのような仕事じゃなくて、テレビに出ている上に、僕がハゲでイジられているのも見ているでしょうから。それは最近子どもとも話しましたね。ハゲとは直接言われなかったのですが、『髪形変えへんの?』と聞かれたので」

原田「間接的でも傷つきませんか?」

小杉「いや、いつかはくると。で、『誰かに何か言われたのか? パパの髪が薄いって?』と聞いたら、子どもが『うん』とうなずくので、『おまえは嫌かもしれないけど、パパは嫌だとは思っていない。右利きや左利きの子がいたり、背が低い子や高い子がいたりするのと一緒だと思っているから。そういうことを言われて嫌な気持ちになったら、その気持ちを忘れずに、自分が嫌だと思うことを人に言わないようにしなさい』と伝えました」

■デブは自分の努力次第

原田「デブはどうですか? 我々、ハゲとデブのダブルパンチです」

小杉「それはね、吉田からもずっと言われているんです。『ハゲに関してはホルモンのせいだから何も言わないけど、太っている件に関しては、自分のせいやぞ。デブは自己管理ができてないってこと。おまえはツッコミなんやから、必要以上に太っているのはあかんのちゃうか。(ダウンタウンの)浜田さんとか(ナインティナインの)矢部さんとか(極楽とんぼの)加藤さんとか、一流の芸人に太っているツッコミの人はおらんやろ』って」

原田「失礼な言い方になりますが、小杉さんはだらしない体なのに、シャープなツッコミをするパイオニアじゃないですか」

小杉「僕のことイジってます?(笑い) ただ、僕は太ってきてから人気が出始めた側面もあるので、吉田も痩せろって言いたいのに強く言えない状況もあったと思うんです。その分、吉田はずっとモヤモヤしていたと思いますけど、僕がダイエットを始めてからは、吉田も気持ちが穏やかになったんじゃないかな」

原田「最近、僕はユーチューブを始めまして、若者の間ではやってるハンズクラップというダンスを毎日30分踊って、必死で痩せようとしてます」

小杉「ハゲはどうしようもないけど、デブは自分の努力次第でどうにでもなりますからね。だから、ハゲとか薄いとかってからかわれても、今は『体は仕上がってきてるからな!』って胸張って返せるんですよ。『令和のハゲに希望はあるのか』というテーマでしたけど、ハゲとは別のところで、自信を持てる何かがあればいいんじゃないかなと思います」

(構成=高田晶子)

▽こすぎ・りゅういち お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」のツッコミ担当。相方は吉田敬。1973年、京都生まれ。吉本興業所属。98年にブラックマヨネーズ結成。2005年、第5回「M―1グランプリ」優勝。出演多数。

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