再び戦地に赴く弟と酒を酌み交わす兄、それを見守る幼なじみというシーンの三浦さんの台詞が、福山の歌詞と完全にオーバーラップしたのだ。
「いっぱい、未来の話しよう……」。映画のラッシュを観ながら、福山は自らの家族の被爆体験と、三浦さんの渾身の演技をどう重ね合わせていたのか……こう考えると胸の奥がうずく。
「また3人で会えたらええね……」。特別映像冒頭の絞り出すような台詞……有村が思い入れの強いシーンを聞かれたときに答えるのが、この兄弟と幼なじみの縁側でのカットだ。
有村の右側には兄(柳楽)、左側には弟の三浦さんが座るシーンに、これから愛する人を戦地に送り出す3人の苦悩と葛藤を言葉以外でどう表現したらいいのか考え抜いたという。
そして本番、有村は右手で兄を、左手で弟の手をしっかりと優しく、でもとても力強く握りしめた。
「台本には無かったのですが、人間の温かさ、ぬくもり、温度っていうのが伝わればいいと思って……」
映画でもドラマでも、三浦さんの入水自殺未遂のシーンは、今となっては……だが胸に残るだろう。
- 芋澤貞雄
- 芸能ジャーナリスト
三浦春馬さん遺作「映画 太陽の子」撮影秘話 最後までストイックを貫いた
76年前に広島に原爆が投下された8月6日、『映画 太陽の子』が公開された。三浦春馬さん(享年30歳)の最後の劇場公開作品になる。
戦時下、新型爆弾の開発に関わった科学者役を柳楽優弥(31)、その弟で肺の療養のため戦地から一時帰国した兵士を三浦さんが演じている。
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