著者のコラム一覧
吉田友和旅行作家

1976年、千葉県生まれ。出版社勤務を経て2005年、旅行作家として活動開始。ドラマ化された「ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン」のほか、著書に「3日もあれば海外旅行」「10日もあれば世界一周」「思い立ったが絶景」「東京発 半日旅」「泣かない一人旅」など多数。

「観光亡国論」アレックス・カー、清野由美著

公開日: 更新日:

 訪日外国人が増え続けている。2011年には年間622万人だったのが、18年にはついに3000万人を突破。政府が目標に掲げる4000万人の達成も現実味を帯びてきたが、一方で観光客が急増したことにより、「観光公害」ともいうべき現象も起きているという。

 特に顕著なのが京都。朱塗りの鳥居が連なる伏見稲荷大社や、美しい禅庭で知られる東福寺などの、いわゆる「インスタ映え」するスポットには観光客が大挙して訪れ、今や参拝することもままならない状況になっている。

 そんな現状に警鐘を鳴らすのが本書だ。著者は東洋文化研究家のアレックス・カー氏。アメリカ出身だが、来日歴は55年と長く、1980年代から日本の文化や観光の振興に取り組んできた。

 多過ぎる訪問客は周辺環境を悪化させ、住民の生活を脅かす。これは世界的な問題でもあり、「オーバーツーリズム」という用語が国連世界観光機関により定められているほどだ。

 対応策を考える上では海外の事例が参考になる。ペルーのマチュピチュ、インドのタージマハルといった世界に名だたる観光地では入場規制が行われている。キャパシティーを超えたら、そもそも受け入れないという断固たる体制を取っているわけだ。

 あるいは、入場料を引き上げるのも有効だという。富士山では現在、5合目以上に登る人に対して、任意で1人1000円の支払いを求めているが、強制ではないため支払わない人も多い。登山道に大行列ができるほどの現状に鑑みれば、この入山料を義務化した上で、料金を7000円にまで引き上げる必要があると著者は説く。

「富士山が7000円か……」

 テーマパーク並みの金額に絶句するが、氏の主張も筋は通っており、それだけ事態が深刻ということなのだろう。(中央公論新社 820円+税)

【連載】紙上であちこち探訪本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参院選神奈川で猛攻の参政党候補に疑惑を直撃! 警視庁時代に「横領発覚→依願退職→退職金で弁済」か

  2. 2

    国分太一だけでない旧ジャニーズのモラル低下…乱交パーティーや大麻疑惑も葬り去られた過去

  3. 3

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  4. 4

    参院選千葉で国民民主党に選挙違反疑惑! パワハラ問題で渦中の女性議員が「証拠」をXに投稿

  5. 5

    石破首相の参院選応援演説「ラーメン大好き作戦」ダダすべり…ご当地名店ツラツラ紹介も大半は実食経験ナシ

  1. 6

    ホリエモンに「Fラン」とコキ下ろされた東洋大学の現在の「実力」は…伊東市長の学歴詐称疑惑でトバッチリ

  2. 7

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  3. 8

    参院選終盤戦「下剋上」14選挙区はココだ! 自公の“指定席”で続々と落選危機…過半数維持は絶望的

  4. 9

    外国人の「日本ブーム」は一巡と専門家 インバウンド需要に陰り…数々のデータではっきり

  5. 10

    「サマージャンボ宝くじ」(連番10枚)を10人にプレゼント