「目でみる日本史」岡部敬史文 山出高士写真

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 アニメやドラマの舞台やモデルになった場所を訪ねる「聖地巡礼」の「日本史」版のような一冊。歴史上の人物たちが見たのと同じ風景を訪ね、その人と同じ視点で撮影したフォトブックだ。

 例えば、平安時代末期、平家の棟梁だった平清盛が見た風景として紹介されるのは「音戸の瀬戸」。

 広島県呉市の本州側と、同市の倉橋島側との間に開削された南北に通じる海峡で、清盛が宋との貿易をより円滑にするために切り開いたとされる。

 現在でも1日に700隻もの船が行き来して瀬戸内海屈指の往来がある。

 その清盛を倒して、武家による政権を初めて開いた源頼朝が見た風景に選ばれたのは、大河ドラマにも登場した「しとどの窟」。平氏軍との「石橋山の戦い」に敗れ、敗走中に身を隠して九死に一生を得た岩屋だ。

 そして戦国時代のヒーロー、織田信長が見た岐阜市の金華山の山頂に立つ「岐阜城」の天守閣からの眺め。

 北に日本アルプス、南には広大な濃尾平野、そして眼下には長良川の流れ。信長はこの城に居を移してから「天下布武」の朱印を用いるようになったと伝わる。

 他にも、日本史の転換点となった「関ケ原の戦い」で西軍を率いた石田三成が布陣した「笹尾山」から見た風景や、幕末、幕府側の代表だった勝海舟が、新政府軍代表の西郷隆盛と池上本門寺で会談する前に立ち寄った「洗足池」、日露戦争で大日本帝国海軍を指揮した東郷平八郎が乗艦した旗艦「三笠」の最上艦橋から見た眺め、そして作家三島由紀夫が家族とともに過ごした静岡・下田の定宿ホテルの部屋から眺めていた「大浦湾」など。

 古代の名もない弥生人から近現代の偉人まで、あの人たちが見た34の風景を紹介。日本史の新たな楽しみ方の提案だ。

(東京書籍 1430円)

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