安藤広大
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安藤広大株式会社識学代表取締役社長 Bリーグ・福島オーナー

1979年大阪府生まれ。株式会社識学代表取締役社長。プロバスケットリーグのBリーグ・福島ファイヤーボンズのオーナー。早大卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現ライク㈱)のジェイコム㈱で取締役営業副本部長などを歴任。2013年に独立し、「識学」を教える講師として数々の企業の業績アップに貢献。15年、株式会社識学を設立。19年、創業から3年11カ月でマザーズへ上場。識学メソッドは、22年3月時点で約2700社以上に導入されている。

阪神・矢野監督編「マネジメントにおいて邪魔になるのは感情 監督は常に一定であるべき」

公開日: 更新日:

阪神・矢野燿大監督 編

 阪神矢野燿大監督(53)は就任1年目の2019年から3位、2位ときて、昨季は開幕から首位を独走しながら、ヤクルトに逆転され2位に終わった。キャンプイン前日に今季限りでの退任を表明して臨んだ22年シーズンは17日時点で4位も、プロ野球史上ワーストとなる開幕17戦1勝に終わるなど最下位に低迷していた。4月にはテレビ中継時の勝利監督インタビューで詩が書かれた色紙を紹介するなどして波紋を呼んだ。感情、喜怒哀楽を前面に出すやり方について聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──退任表明した矢野監督は「チームのためにも、選手のためにも、申し訳ないけど俺のためにもなるという決断」と話した。

「あくまで識学の観点からお話ししますと、リーダーとして『俺だからついてくる』という形にしてはいけません。あくまで監督という機能を遂行すればいいのであって、選手にとって監督のストーリーは関係ない。人間のストーリーや性格といったもので組織を牽引しようとすると、『好き嫌い』が発生します。退任表明を聞き、中には頑張ろうと思った選手はいるのでしょうが、しらけてしまった選手もいるかもしれない。チーム内に『好き』と『嫌い』という色合いの違いをつくると、チームとして均一の成長が図れなくなります。それによってプラスの影響より、マイナス側の人たちが負に引っ張る力の方が強くなり、組織として機能しなくなってくる。監督のような上に立つ人間が意識しなければいけないポイントは、常に一定であることなんです」

 ──感情では組織は機能しないというわけですね。

「感情で組織を引っ張ると、チームに波をつくることになります。波は高いところもあれば低いところもある。低い波がマイナスを生み出し、高いところも感情で上がってるだけなので長続きしない。だからこそ、組織の枠組みをつくるリーダーは、一定であることが必要なのです。選手と一定の距離感を保ち、できるだけ感情を表に出さない。選手にただ、求める基準を明確に示すことが再現性がある組織をつくる上で非常に重要です」

 ──矢野監督は色紙を紹介した際、「波」という言葉を引き合いに、「ビッグウエーブにしていきたい」と連呼しました。

「リーダーは本来、事実に向き合って何が足りないのかを(数字などで)示さないといけません。勝敗は運の要素もありますが、マネジメントにおいて邪魔になるのは感情です。この選手には思い入れがあるとか、選手が可哀想だとなりますからね」

落合監督がつくる枠組みは無機質

 ──あくまで冷静かつ論理的であれと。

「先日、中日で監督を務めた落合博満さん(2004~11年の8年間で4度のリーグ優勝)のことが書かれた本を読みましたが、普段は感情を完全に押し殺し、識学的には素晴らしい監督だと思いました。そういう監督が優勝したときに流す涙は美しいなと。落合監督がつくる枠組みは無機質なので、選手が落合監督の言う通りにできなかった際に、選手全員が自分に(意識が)向く。だからこそ選手は成長する。枠組みをつくる側が感情を持ってしまうと、選手がうまくいかなかった時に監督のせいにすることもある。それでは成長しません」

 ──それが常勝チームをつくる要因になった。

「落合監督の要求は難易度が高いケースもあったでしょうが、それを選手がやりきった上で勝てなければ、すべては俺の責任というような、リーダーとプレーヤーがいい関係を築いたように思います。(その半面)監督が兄貴肌のようになると、何かエラーが起きたり、負けたりした時に誰の責任かが曖昧になる。選手は監督の言う通りにやりきることが責任で、監督はその上で勝利をすることが責任。行き着くところは監督の責任になるのですが、監督と選手の責任が明確になっていないと感情的な組織運営になり、チームとして機能しなくなってしまいます」

【著書紹介】リーダーシップ論をまとめた「リーダーの仮面」に続き、今年3月に発売された「数値化の鬼 『仕事ができる人』に共通する、たった1つの思考法」(1650円=税込み)は、全てのビジネスパーソンに向けた本だ。ビジネスパーソンが「数字」と聞くと、目標やノルマなどネガティブなイメージを持ちがちだが、本書では、「数字」は自分自身を客観視できる“唯一の指標”であり、何が足りていないか、どういう課題があるのかを“見える化”するツールであるとしている。物事を数字で考える習慣を身に付けることで、「仕事ができる人(=評価される人)」になれるという。

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