小説「ゴルフ人間図鑑」 第7話 ホールインワン
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(11)あれは俺が足で入れたんだ
安生は、正一の前の組でラウンドしていた。後ろの組にみずなみ銀行の行員がプレーしていることは知っていた。 安生が、9番ショートホールのプレーを終えた。他のプレーヤーは、すでにプレーを終えて、昼…
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(10)銀行主催のコンペに参加
ニュースを見ていると、闇バイトに手を出した者は、「自分の素性を知られてしまってどうしようもなかった」と言っているが、あれは言い訳に過ぎない。闇バイトが犯罪であるのはわかっているが、それ以上に金が欲し…
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(9)「まさかの坂」を転がり落ちる
田舎に住んでいる正一の母親が認知症で施設に入ることになったのだ。 母親は、早くに夫、すなわち正一の父親を亡くし、一人暮らしをしていたが、70歳を過ぎ、認知症が激しくなった。このままでは火事な…
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(8)あっという間に借金地獄に
安生は、今、刑事の立場というより追い詰められた容疑者の気持ちになっていた。それほど正一は、ぐいぐいと迫ってくるのだ。 「年利14%で100万円を借りました。元利均等返済です。54回払いを選択し…
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(7)銀行のカードローンの金利は…
7 「ひでぇ支店長だな。少しくらい援助してくれればいいのに。ケチな野郎だ。まあ、元気出せよ。それでどうしたんだ」 安生は、うなだれている正一を励ますように言った。容疑者を元気づけてもどう…
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(6)記念品配りの習慣は厄払い
結局、午後からはゴルフにならなかった。最悪のスコアになってしまった。ホールインワンで動揺してしまったのだ。 5 「ホールインワンって嬉しい事じゃないのか」 安生は聞いた。 …
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(5)無保険でホールインワン
正一は、9番アイアンを持った。大きすぎるクラブかと思ったが、砲台グリーンであり、自分の技量を考えれば、少しオーバー目に打った方がいい。今までミスショットの連発だが、一回くらいはいいところを見せたい。…
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(4)25組100人の大コンペ
課長の人見潔は、高卒のベテランで50歳だ。人柄は気さくで、部下の面倒見もいい。 「課長、着きましたよ。今、下にいます」 「おお、悪いな。今すぐに下りていく」 人見が答えた。 …
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(3)ホールインワンが原因なんです
新聞やテレビで報道される横領や不正融資は、銀行として手に負えなくなるほど巨額である場合だ。秘密にしておけなくなり、仕方なく発表する。時には、経営トップの引責辞任にまで発展することがある。 「そ…
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(2)エリートがなぜ闇バイトに?
2 「細田正一、40歳、住所不定、無職。これで間違いないね」 安生は、目の前に座り、うつむき気味に首を垂れている男に呼びかけた。 「はい……」 今にも消え入りそうな声で正一…
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(1)特殊詐欺の被害額は67億円
1 身内を騙って金銭をだまし取るいわゆるオレオレ詐欺の被害が一向に減少しない。 令和4年に警視庁が認知した特殊詐欺事件は、件数が3218件で減少しているものの、被害額は67億7800万…