1939年、満州の開拓団の家庭に生まれた小林栄一は、母を亡くし、父も召集されたため、6歳のときに3歳の弟と2人きりで取り残された。弟と引き離され、7回も中国人の家をたらい回しにされ、人間扱いされず、学校にも行かせてもらえなかった。ひとりで生き抜いた彼を支えたのは、古びた一族の集合写真だった。やがて、成長して日本に帰国した弟が栄一を捜し出し、父親とも再会できた。自分を育ててくれた中国に感謝しつつも、栄一は日本への帰国を決意する。〈中国残留孤児〉の娘である著者が、中国から永住帰国した人々の〈落葉帰根〉の思いに迫るノンフィクション。(新潮社 1400円+税)