天笠啓祐氏推薦 2016年の「科学技術」を読み解く3冊

公開日: 更新日:

 2016年を読み解くキーワードは「失われる制御」である。「科学・技術の危機 再生のための対話/池内了著」の中で、「GRAINN」という言葉が紹介されている。これは人間と人工物の境界が見失われつつある領域で、暴走を始めた最前線といえる。Gはゲノミクス、Rはロボット、AIは人工知能、NNはニューロサイエンス(脳科学)とナノテクノロジーで、生命科学や医療の分野が多い。

 本書では、その要因として「科学の技術化」を挙げている。分かりやすく言えば、科学が経済の論理に屈していることを意味する。企業の支配下に入った科学者・技術者は、狭い領域でしか物事を考えず、ムラを形成し、批判する者に対しては攻撃的になる構造がつくられている、と指摘している。

 失われた制御の代表が原発である。悲惨な事故からまだ5年も経たないのに、再稼働、原発輸出が進められている。「世界の原発産業と日本の原発輸出/中野洋一著」は、世界の中で日本が最も強力に原発輸出を進めている理由が示されている。東芝がウェスチングハウス社を買収して以来、日本の企業が原発輸出の最前線におり、そのためには日本で原発が稼働していなければならない。暴走が起きる条件がつくられている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解