「星はらはらと」太田治子著

公開日: 更新日:

 言文一致体の小説「浮雲」で、明治の文学界に登場した二葉亭四迷。エリートであったにもかかわらず、時代の風潮に違和感を覚えて不器用に生きた男でもあった。本書は、そんな二葉亭四迷に魅せられた著者が彼の生きた道筋をたどりつつ、多くの男が立身出世を目指し、列強に負けない強い国へとひた走った明治という時代も浮き彫りにした評伝記だ。

 元治元年に江戸・市谷で生まれてから、赴任地・ロシアからの帰国途中に肺結核で亡くなるまでの45年の人生は、どのようなものだったのか。エリート官吏の職になじめずに、まるで現代のフリーターのように生きた二葉亭の生き方を、「浮雲」の主人公・内海文三の優しくも要領の悪い生き方に重ねて追いかけていく。

 日本とロシアが再び戦うことのないよう日露交流の懸け橋になろうと志したこと、文士として生きていく契機となった坪内逍遥との出会い、女性に対するナイーブすぎる態度などが次第に浮かび上がる。彼の下宿したロシア・サンクトペテルブルクのアパートにも実際に足を運んでおり、二葉亭が好きで仕方ないという著者の情熱が伝わってくる。(中日新聞社 1800円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  3. 3
    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

    試合ガタ減り、選手クーデター未遂…“不毛の8年”で晩節汚した青木功JGTO会長ついに退任

  4. 4
    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

    岸田自民は補選「全敗」確定情報…島根1区も水面下で“白旗”揚げちゃった? 党幹部すら諦めモードの末期状態

  5. 5
    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

    ソフトB山川穂高を直撃「古巣への不義理、SBファンの拒否反応をどう思っていますか?」

  1. 6
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

    「アンメット」の“三瓶先生”にハマる視聴者続出!杉咲花も惚れた若葉竜也「無愛想な魅力」の原点

  4. 9
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  5. 10
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ