「高校サッカーボーイズU―18」はらだみずき著
サッカーボーイズ・シリーズ高校生編がついに完結である。これで中学生編5巻、高校生編3巻の合計8巻が出たことになるが、その8巻目を突然いまさら紹介されたって、これから全部読むのは大変だと思われるかもしれない。しかし、この希有なシリーズがついに8巻まで出たことを記録として残しておきたいと思う。それに、この8巻目を読んで、ここからさかのぼってもいいのだ。
それでは、このシリーズが希有であるとはどういうことか。まずそこから始めたい。これは突出した才能を持つプレーヤーの誕生物語ではない。1人の天才が幾多の困難を乗り越えて、世界に羽ばたいていく物語ではない。そういう話も面白いとは思うものの、これはそうではない。どこにでもいるようなサッカー好きの少年たちの物語なのである。つまり、私たちの物語なのだ。
中学生のときはボールを追いかけるだけで面白かったが(いや、それでも実にさまざまなことが起きて、それを活写してきたから、このシリーズが素晴らしかったのだが)、高校生になるとそういうわけにはいかなくなる。
少年たちは現実に直面するのだ。ひらたく言えば、自分よりもサッカーのうまい子はたくさんいる。だから試合に出ることも出来ない。高校生編を貫くのはその苦さである。私たちの物語である、というのはそういうことだ。この次に始まるのは大学生編なのか、社会人編なのか。それを楽しみに待ちたい。
(KADOKAWA 1500円+税)