ネットと極論
「ネット右翼とは何か」樋口直人ほか著
いつのまにか罵倒の嵐となったネット界。どうしてあんなに下品な極論だらけなのか。
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ネット右翼、略して「ネトウヨ」。インターネットの世界で、いまおそらく最も目立つ“政治勢力”だが、その実態は定かではない。格差社会から落ちこぼれて怨念を抱く低収入のニートやオタクっぽいイメージが一般的だが、本書によれば明らかな誤解。社会学者らの調査では非正規より正規雇用者のほうが多く、自営業や経営者も多数。
また「嫌韓嫌中」「保守志向」「積極的意見発信」と軸を分けて調べると「ネット右翼」と「オンライン排外主義」は微妙に異なることもわかった。また「ネオナチ=スキンヘッド」などの目に見える特徴がなく、SNSを分析すると「生活者ネトウヨ」「秘匿ネトウヨ」「ステルスネトウヨ」「真正ネトウヨ」「リア充ネトウヨ」などに細分化されるという。
高学歴なのと安倍政権への「右からの批判」が多いのが共通点だ。表はまともな市民の顔をして、中身は排外の権化。いやな世の中になったものだ。
(青弓社 1600円+税)
「ファクトチェック最前線」立岩陽一郎著
トランプが叫ぶ「フェイクニュース!」の怒号に対抗するのがファクトチェックと思われがちだが、それは誤解。たとえばオバマ時代も「再生可能エネルギーで雇用創出」と大統領がいえば、即座に「太陽光パネルなどのビジネスの多くは中国。アメリカの雇用につながるかどうかは不明」とファクトチェックが入る。つまり「誤解させる可能性」をチェックし、修正コメントを入れる作業なのだ。
本書は調査報道NPOを主宰し、本場アメリカでの最初期からファクトチェックの実情も知る著者による基本的な解説書。著者は本紙好評連載コラム「ファクトチェック・ニッポン!」の筆者だ。
(あけび書房 1400円+税)
「現代アメリカ政治とメディア」前嶋和弘ほか編著
メディアが有名にしたのに、そのメディアを叩くことで喝采を浴びるトランプ。
特にCNNなどは大統領から攻撃されればされるほど左傾化し、民主党支持者からも危惧されているという。
米国駐在の経験が長いジャーナリストと政治学者が組んだ本書はトランプ大統領の気質、メディア叩きというかたちによる「メディア消費」の実態、デジタルメディアの状況、政治の分極化とメディアの関係など各種の角度から現状を論じている。
(東洋経済新報社 2800円+税)